日本建築集中講義
藤森照信・山口晃 著
淡交社
刊行:2013/08/06、刷:2013/10/07(第3版)
単行本の元となった連載:2012/01-12「なごみ」。これに加筆・写真増補
福岡天神のジュンク堂福岡店で購入
読了:2014/06/27
著者二人が各地の日本建築を見て歩いて好きなことを言うという楽しく気楽な本。
建築はこういう風に見るのだなと、肩肘張らずに読んでいける。
『ヘンな日本美術史』以来、山口氏が気に入っているので買ってみた。
藤森氏のは読んだことは無かったが、もちろん名前は知っていた。
山口氏の挿絵(というかマンガ)がほのぼのしている。
写真がカラーで大きかったら、なおよかったかなと思った。が、そうすると高くなるのでやめたのだろう。
でも、この著者なら売れたような気もしなくもない。
各回最後にそれぞれの著者によるアンケート回答が載っている。藤森氏は字が雑。
建築家というのは、几帳面に図面を引いて字もきれいになるのかと思ったらそうでもないらしい。
藤森氏自身の建築作品も出てくるが、木の上でぐらぐら揺れる茶室などなかなかに奇想天外である。
こういうものをつくっちゃう人だから、字も崩れているのだなと納得した。
以下、引用を中心とするメモ
- 第1回 法隆寺
- [引用] 藤森「法隆寺の構成配置は、大小の建物を散らして配置して、そうすると全体の印象がばらけるんですが、
それを回廊で一つの空間にまとめる方法。」
- [引用] 藤森「それに中門の真ん中に柱があるのは、聖徳太子の怨霊を閉じ込めるためだなんていう説もウソ。
聖徳太子は仏教徒。心ある仏教徒は成仏しているから化けてなんか出ませんよ。」
- 上のは、たぶん梅原猛『隠された十字架』にある説のこと。
- 第2回 日吉大社
- [引用] 藤森「テクスチャーのるつぼ、みたいな感じ。しかも湿気とともにある。」
- 第3回 旧岩崎家住宅
- [引用] 藤森「(洋館は)外観も内部もいろいろやりすぎてる。コンドルはあの時期ぐちゃぐちゃやりたかったんじゃないかな。」
- [引用] 藤森「東京であれだけの和館は見られないですよ。」
- 第4回 投入堂
- [引用] 山口「柱もぎちぎちと組まれているわりに、どこかにほったらかした抜け感があって。上の軒はピュッと開いている感じがよかったです。」
- 第5回 聴竹居
- [引用] 藤森「藤井の場合は珍しくグラフ用紙で設計しています。だから聴竹居は、立体幾何学的な下地がしみ込んだ上に、
複雑かつ几帳面なことをやるもんだから一風変わったミニマリズムになる。」
- 第6回 待庵
- [引用] 藤森「待庵では、全部ガタガタの構成にして高さの目安となるものを消している。窓もいくつかあるけど、
プロポーションや位置が少しずつずれていたり。あまりの微妙さにビックリしましたよ。」
- [引用] 藤森「待庵は丁寧に造られているわけじゃない。むしろスピード感をもって作られているんです。」
- 第7回 修学院離宮
- 修学院離宮は、江戸時代初期の後水尾天皇が王朝プレイをするためのものだった。すでに滅びていた浄土式庭園を復活した。
浄土式庭園は、庭を舟で見ることや、あの世の象徴として洲浜を備えていることが特徴。
中に田園が作られていて、国見プレイができるようになっている。
- 第8回 旧閑谷学校
- [引用] 藤森「建築を見に行って、あんなに土木の力を感じたのは初めて。ああいう建築のスケールや周りの地形を無視した土木的なものを、
ひとつ敷地の中にボーンと作る構成はおもしろい。」
- 第9回 箱木千年家
- [引用] 藤森「箱木千年家は、縄文時代の竪穴式住居の習慣がずっと伝わってる、日本最古の好例です。」
- [引用] 山口「模型と写真と実物と、どれが本物かぜんぜんわからなくて(笑)。」
- 第10回 角屋
- [引用] 藤森「角屋は元禄期にすでに、インテリアのもっとも心地よい状態は布で包むことだという理解に至っていた。
つまり角屋は心地よいインテリアの究極です。」
- 第11回 松本城
- [引用] 藤森「どんな城であれ異常なファンがいっぱいいる。あれ、なんでだろう?みんななりたがるんだよね、一国一城の主(あるじ)に。
城なんて全然役に立たないのに。だってさ、造りはメチャクチャで、上に上がるにつれて狭くなるし、部屋の配置もバラバラだし。」
- 第12回 三渓園
- [引用] 藤森「日本の数寄屋の中でもレベルの高いものがこんなに揃っているところはほかにない。おまけに臨春閣は、桂離宮と並ぶ
数寄屋の代表作ですから。」
- [引用] 藤森「聴秋閣ってカワイイ感じだったね。(中略)一応格式をもった造りをしているにもかかわらず、全体のスケールがちっちゃい。」
- 補講 西本願寺
- [引用] 藤森「現存日本最古の能舞台もあるし、豪華さの美学は二つの書院で、薄くて軽いという美学は飛雲閣で見られる。」
- [引用] 山口「照明があの高さだったおかげで、金箔が活きてました。上から照らすと暗く沈んでしまうんですが、横から照らすと
光が反射して金箔部分が明るくなって、絵にすぅーっと奥行きが出るんです。」