風刺文学の白眉『ガリバー旅行記』とその時代

原田範行 著
NHK カルチャーラジオ 文学の世界 2015 年 1~3 月、NHK 出版
刊行:2015/01/01(発売:2014/12/25)
福岡天神の積文館書店天神地下街店で購入
読了:2015/03/26
ガリバーと言えばもちろん子供の時に小人国の物語などを読むわけだが、大人向けとして全編読んだことはまだ無い。 で、手軽に放送で理解してしまおうと思った次第。

最後まで放送を聴いてみると、やはりこれは風刺文学というよりも優れたSFというか前衛小説のようなものだという気もしてくる。 そういった小説は、奇妙な状況を作り出すことで、深い問いを発する。 たとえば、安部公房は『他人の顔』という小説で、顔を無くすという状況を作り出すことによって、 顔に対する深い洞察をしている。『ガリバー旅行記』も、人間を人間でない世界の中に置くことで、人間に対する深い洞察をしているのだ。 これを単に風刺と呼んで良いのだろうか?

ガリバー旅行記の影響は意外なところにも及んでいることに気付く。 たとえば、インターネットサービスの Yahoo! は、旅行記に出てくるヤフー (yahoo) を意識して付けられたもののようだ (Wikipedia による)。 宮崎駿の「天空の城ラピュタ」は、旅行記に出てくる飛ぶ島ラピュタから付けられた名前である。


テキスト+放送のサマリー

第1回 <近代>の出発―『ガリバー旅行記』が書かれた18世紀

第2回 作者ジョナサン・スウィフトの数奇な生涯

第3回 小人国リリパットの冒険(一)―風刺の醍醐味

第4回 小人国リリパットの冒険(二)―現実を透視するミニチュアの世界

第5回 大人国ブロブディンナグの冒険(一)―視覚表現の多様さと深さ

第6回 大人国ブロブディンナグの冒険(二)―無力感に苛まれるガリバー

第7回 空飛ぶ島ラピュタと洋上の島バルニバービの冒険―滑稽な島々の点描

第8回 魔術師の島グラブダブドリッブとラグナグ島の冒険

第9回 日本の冒険―『ガリバー旅行記』成立の謎に迫る

第10回 馬のフウイヌムと醜悪なヤフーの島の冒険(一)―馬たちの<良識>

第11回 馬のフウイヌムと醜悪なヤフーの島の冒険(二)―ガリバーの陶酔と語りの揺らぎ

第12回 『ガリバー旅行記』、その後―名作か問題作か、児童文学か大人の文学か