日本の領土の歴史を真面目にたどってあるという感じの本。以前に読んだ 孫崎享「日本の国境問題」が外交問題としてこれを捉えているのに対して、 こちらは歴史の復習だから、問題解決に直接には役に立たない。しかし、歴史的にはどういう問題なのかを見ておくのには役に立つ。 独自の見解のようなものはそれほど書かれていない。
本の前半は、大日本帝国の領土の拡張史である。後半は、北方領土、竹島、尖閣諸島問題になる。以下は、その後半部のメモである。
- 北方領土の歴史としては以下のことが重要である。これは、比較的はっきりしている。
- 1855 年の「日露通好条約」では、択捉島とウルップ島の間に国境が定められた。樺太はグレーゾーンであった。
- 1875 年の「樺太千島交換条約」で、樺太はロシア領、千島列島全島が日本領となった。
- 1905 年の日露戦争の後、南樺太が日本領となった。
- 1945 年のヤルタ会談において、ルーズベルトは、南樺太と千島列島を領有したいというスターリンの申し出を認めてしまった。
- 1945 年 8 月 18 日から、ソ連軍は占守島を攻撃した。ソ連軍が北方四島に入ったのは、8 月 28 日で、すべて占領したのは 9 月 5 日である。 このように日本軍が武装解除した後に入ってきているので、不当というべきである。しかし、米ソの駆け引きの中で現状のようになってしまった。
- 著者は、サンフランシスコ講和条約で放棄した千島列島の範囲は明確ではないという立場である。(第2章の終わりのあたり)
- 竹島は、日本側は 1905 年に島根県が編入したことを自国領であることの根拠とし、韓国側は鬱陵島の属島だと見ているということである。 1905 年で「無主地先占」が成立するかどうかがポイントになる。サンフランシスコ講和条約では、領有権はわざと曖昧にされたようである。 著者は自分の考えを以下のようにまとめている「日本が竹島を島根県に編入したのは日露戦争下であった。軍事主導体制国家としてみれば、 地図でもわかるようにこの海域にロシアを牽制する“基地”は確かに必要である。そのような視点で領土拡張を図った。その折りに竹島が 実質的に韓国の支配が及んでいないこともあり、大きなエアポケットになっていた。それだけに先有の権利を日本が持っていたことになり、 それが歴史上では実質的に日本の領土とされてきたのではないか」
- 尖閣諸島の問題は、1895 年の沖縄県編入にさかのぼる。中国や台湾が領有を主張し始めたのは石油資源問題が出てきた 1970 年以降である。 沖縄返還協定では、尖閣諸島の帰属は明らかではない。日中国交回復の時には棚上げにされた。
ところで、尖閣は中国の領土、竹島は日本の領土と考えている人もいる ことを数年前に知ったので、ここにメモしておく。やはり領土問題はなかなか難しいものである。 尖閣に関しては、琉球が独立して、琉球と中国もしくは台湾との間で決めるのが歴史的には最も正当であろう。 そういうふうに見れば、シベリアもロシアから独立すれば北方領土問題は消えるであろう。