『義眼殺人事件』に引き続いて、ペリー・メイスンを年末年始休暇に一気読み。 前から本棚にあったので、以前に読んだのかもしれないが、全然憶えていなかったので、初めてかもしれない。 物語上も、『義眼殺人事件』の最後には『奇妙な花嫁』の予告編が入っており、『奇妙な花嫁』の最後には 『義眼殺人事件』の予告編が入っているということで、一セットになっているらしい。 といっても、2つの小説に内容上直接のつながりはない。
本作品でも、行動派弁護士メイスンが私立探偵のポール・ドレイクと組んで芝居を打ったりしながら、真相に到達すると共に、 依頼人を救う。しかし、その救うやり方は、メイスンが仕掛けたトリックで証拠隠滅をしていて、法廷では真相が明らかにならない。 そんなことをして良いのかという話もあるが、アメリカの法廷というのは検事と弁護士の闘争なのでそれもありなのかもしれない。 真犯人が世間から隠されるのは、殺された人物を極悪人に設定することで、小説の中では許されるということにしてある。
読者の目を真犯人から遠ざけるように作ってある心理的なトリックも見事である(私もその罠にはまった)。 犯人にされそうになるローダは、最初にバッグを弁護士事務所に忘れてくるので、鍵を犯行現場に忘れてきても不自然ではないと思わせる。 真犯人は、弱気な人物に描かれるので、こんな人が殺人をするわけがないと思わせる。しかし、実際は弱気であるがゆえに殺人を犯しているのだ。