ABC 殺人事件

著者Agatha Christie
訳者堀内 静子
シリーズクリスティー文庫 11
発行所早川書房
刊行2003/11/15、刷:2009/10/31(9刷)
原題The ABC Murders
原出版社William Collins Sons & Co. Ltd.
原著刊行1936
入手福岡市西部図書館で借りた
読了2019/08/18

BBC ドラマを NHK BS でやっていたのを見たのを機に読んだ。『ABC 殺人事件』自体は 何度か違うバージョンで(漫画版なども含む)読んだことがあり、最初から犯人も大筋も知ってはいたが、 改めてドラマと対比しながら読むのも楽しい。BBC ドラマの特徴は後述。

文庫版の解説(法月綸太郎)に「ABC殺人事件」のポイントが2点要領良くまとめられていた。 この2つを上手に組み合わせて、推理小説史に輝く傑作となっているということだ。

  1. チェスタトンの有名な逆説(1911)「死体を隠したいと思う者は、死体の山を築いてそれを隠す」の連続殺人事件への応用。
  2. 記憶障碍を持つ男 (A.B. Cust) に対して、自分が犯人だと信じ込ませてゆくプロセス。

話の大筋として、殺人事件が起こった場所と日と殺された人を表にしておく。 なお、原作で事件が起こっているのは 1935 年、ドラマでは 1933 年である。

場所被害者日(原作)日 (BBC 2018)
AAndoverAlice Asher6/21(金)3/31
BBexhillBetty (Elizabeth) Bernard7/25(木)[予告日], 7/24(水)[実際の殺害日]4/4
CChurstonSir Carmichael Clarke8/30(金)4/10
DDoncasterGeorge Earlsfield (原作), Benny Grew (BBC 2018 では間違えて殺された), Dexter Dooley (BBC 2018 におけるターゲット)9/11(水)?
EEmbsay (BBC 2018 のみ)Ernie Edwards (BBC 2018 のみ)-?

BBC テレビドラマ版の特徴

BBC テレビドラマ 2018 年版 (Sarah Phelps 脚本) の特徴は、『無実はさいなむ』 もそうだったが、何しろ暗い。原作は Poirot と Hastings の軽妙なやり取りもあるのだが、それもなく(そもそも Hastings が全く出てこない)、 むしろ Poirot の過去の回想シーンにおける暗い記憶を交えながら、心理劇としての側面が強調されている。

以下、ドラマ版の特徴をいくつか挙げてゆく。

ドラマについて解説してある web pages: