『走れメロス』は、誰しも教科書で読んだことがあるだろう。私も読んだ覚えがある。 とはいえ、筋を忘れていたので、「100 分 de 名著」で取り上げられたのを期に 読み返してみた。短編なのですぐに読める。
末尾に「(古伝説と、シルレルの詩から。)」と書かれている通り、西洋の伝承とシラーの「人質」が下敷きになっているそうだ。 そのへんは、 Wikipediaに詳しく書かれているし、詳しい対比をした文章が ネット上にある。
話としてはもちろん美談だから、感動するのではあるが、一方で、あまりにもありえない話なので、 こんなのでいいのかという気もしてくる。感動のさせ方が、少年漫画風である。
無論、太宰は文章家だから、そういうおとぎ話でもそれなりに感動的に読ませるように様々の工夫を施してある。 全体的には美文調で、「邪智暴虐」のような漢語を使って文章に緊張感を与えている。最後のメロスとセリヌンティウスの 殴り合いの場面は、劇的な効果を加えるために太宰が加えたものである。