大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか

著者佐々木 閑
シリーズNHK 出版新書 572
発行所NHK 出版
電子書籍
電子書籍刊行2019/01/10
電子書籍底本刊行2019/01/10(第1刷)
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読了2021/09/19

これまで仏教の本はいろいろ読んでみたけど、大乗仏教全体を俯瞰的に捉えたものはなかなかなかった。 本書は、大乗仏教全体を見渡す感じで書かれており、大乗仏教の思想がわかりやすかった。 とくに、最後の方で、仏教がヒンドゥー教化することで、インドでは仏教が埋没してしまったという解説は なるほどと思った。日本仏教になぜあんなにインドの神様がたくさん登場するのか、なぜ仏教思想と伝統的インド思想が すぐにぐちゃぐちゃに混ざって大混乱してしまうのかがわかった。

難しげな思想をばっさり斬っているところはさすがである。たとえば、 第二講の「般若経」で、龍樹の「空」概念を説明しているところがあるが、結局のところ 「レトリカルに説得力のあるかたちで、本来は違うものを「同じ」だと言っただけなのです。」とにべもない。

第二講の「般若経」の中で、釈迦の存在論が説明される。 これってマッハの感性的要素一元論 に似ていると思いながら興味深く読んだ。感覚の方が実在していて、たとえば「石」はそれらを組み合わせた架空のものだという 主張はマッハっぽいのである。

サマリー

第一講 「釈迦の仏教」から大乗仏教へ

「釈迦の仏教」と大乗仏教

大乗仏教の成立

大乗仏教の考え方

第二講 般若経―世界は「空」である

般若経の特徴

六波羅蜜

第三講 法華経―なぜ「諸経の王」なのか

法華経の歴史

一仏乗

善行

久遠実成

第四講 浄土教―阿弥陀と極楽の誕生

浄土教の成立

阿弥陀信仰

救済としての極楽浄土

第五講 華厳経・密教―宇宙を具現するブッダ

一即多・多即一

鎮護国家

密教

第六講 大乗涅槃経・禅―私の中に仏がいる

仏教のヒンドゥー教化

第七講 大乗仏教のゆくえ

鈴木大拙

こころ教

科学技術の発展を受けて、すべての宗教は「こころ教」に近づくであろう。

補講 今も揺れる大乗仏教の世界―『大乗起信論』をめぐって

大乗仏教の基本典籍だとされる『大乗起信論』は、1~2世紀頃に最初に書かれたと言われていた。 ところが、1918 年ころ、望月信亨が、南北朝時代の中国において創作されたものだという説を出した。 その後大論争になったものの未解決問題とされていた。ごく最近(2017 年)、大竹晋が、『大乗起信論』は、 南北朝時代に中国人が先行文献をパッチワークして作ったものだと証明した。
参考: 石井公成による大竹晋『大乗起信論成立問題の研究』の書評