ル・ボン 群衆心理

著者武田 砂鉄
シリーズNHK 100分de名著 2021 年 9 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2021/09/01(発売:2021/08/25)
入手電子書籍書店 honto で購入
読了2021/09/28
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大衆論の名著として、「100分de名著」では2年前に 『オルテガ 大衆の反逆』が取り上げられ、 今回はさらに先駆的な『群衆心理』が取り上げられるということで、いずれも大衆の危険性を警戒した本である。 大衆社会論には、 貴族主義的なものと民主主義的なものの大きく2つの流れがあるというコーンハウザーの図式というのが 良く知られているそうである。その図式で言えば、オルテガもル・ボンも貴族主義的大衆社会論に分類され、 そこでは、エリートの特権的な地位が失われ、非エリートがエリートに近づくという点に注目する。 一方の民主主義的大衆社会論は、非エリートがエリートによって操縦されやすくなった点に注目するものだそうだ。

今、この本が取り上げられるのは、プロデューサーが現代の社会や政治に懸念を抱いたからだろう。 このところ東京や大阪の知事とか巨大都市の市長とかに変な人が次々に選ばれるのを見るにつけ、その心配はよくわかる。

『群衆心理』の原題 La psychologie des foules の中の「la foule 群衆」という単語を見ると、どうしても 「fou, folle 気が狂った」という単語を連想してしまう。語源的には違うようなのだが、 音が似ているし、英語の fool にも似ているので、フランス人だったら連想するのではないかと思う。 それも la foule を否定的に捉えることにつながっているのではないだろうか。 たまたまではあるが、Thomas Hardy の小説『Far From the Madding Crowd 遥か群衆を離れて』は、フランス語にすると "Loin de la Foule Folle" になってしまうようだ。ちなみに、語源的には la foule は fouler(押しつぶす)とつながっており、 ラテン語の語幹 full から来ているそうである。 一方で、fou はラテン語の follis (風船や膨らませた袋)から来ているらしい

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 群衆心理のメカニズム

テーマ:群衆は暗示を受けやすく、ものごとを軽々しく信じる。

ギュスターヴ・ル・ボン (1841-1931)

関心の幅の広い人であった。

群衆

群衆の特徴

  1. 衝動的で、動揺しやすく、昂奮しやすい
  2. 暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じる性質
  3. 感情が誇張的で単純
  4. 偏狭さと横暴さと保守的傾向

なぜ人は群衆になるのか

第2回 「単純化」が社会を覆う

群衆は単純さを好む

群衆は心象と幻想を好む

第3回 操られる群衆心理

断言が群衆を導く

断言と反復と感染

メディア

第4回 群衆心理の暴走は止められるか

群衆のエネルギーが良い方向に向かうとき

威厳とカリスマ

教育