「100分でde名著」夏休み特集で、10代の少年少女のために本を紹介するという趣向。
2018 年以来2度目である。
1回ずつ別々の講師がそれぞれ1冊ずつ名著を紹介する。
第2回と第3回で取り上げられている本は新しい本だということもあり、今回選ばれている本には、
私が読んだことのあるものはなかった。無論、第4回の『竹取物語』は、現代語訳とか
教科書の中で部分採録されているものとかを読んだことはあるけれど。
今回の司会は加藤シゲアキ(作家・タレント)と安部みちこアナウンサー。
聞き手ゲストは、鈴木福(第1回、第2回)と本田望結(第3回、第4回)。
「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー
第1回 トルストイ『人は何で生きるか』
基本情報
- レフ・トルストイ (1828-1910) 著。
- 1881 年、トルストイが 53 歳の時に創作した「民話」。
- 冒頭に6つの聖書の言葉が並んでいる。愛と神は同じ。
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- 貧しい靴職人のセミヨンがいた。
- ある日、貸付金の回収ができずにヤケ酒を飲んでいると、裸の男がいた。
セミヨンはその男を家に連れて帰る。
- 妻のマトリョーナは怒りだしたが、セミヨンが神のことを思い出させたので、男に夕飯を作ってやる。
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- 良心は万人に与えられている。
- ギリギリの状態でこそ良心は目覚める。
- 裸の男の名前はミハイル。実は、彼は天使であることが後でわかる。
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- ミハイルは居候となり、靴職人として働く。彼はよく働いた。
- 1年後、横暴な金持ちの男がやってきて長靴を注文する。ところが、ミハイルが作ったのは長靴ではなく、短靴だった。
- 間もなく、金持ちの男は突然亡くなって、短靴が必要になった。
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- 寿命は自分で決められない。一日一日を大切に生きよう。
- ミハイルには天使が見える。死ぬと、天使が魂を神のもとに届ける。
- ミハイルが微笑むのは3回。1回目はマトリョーナが夕食を出してくれた時、2回目は金持ちが長靴を注文したとき。
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- 6年目のある日、女性と双子の女の子が靴の注文にやってきた。女性は子供の実の親ではなくて、孤児を引き取って育てていた。
- 女性は、子供たちをかわいがって育てていた。ミハイルは子供たちを見て3回目に微笑んだ。
- ミハイルは、神様から赦されて天使に戻った。
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- ミハイルが神様から3つの問いを与えられていた。人の中には何があるか?人に与えられていないものは何か?
人は何によって生きるか?
- ミハイルが微笑んだのは、その問いの答えが分かった時だった。
- 第1の問いの答えは、愛の種。第2の問いの答えは、人生の実相を照らす叡智。第3の問いの答えは、他者への愛。
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- ミハイルは最後に言う「神は人々が合一して生きることをお望みなのです。」
「人々はただ愛のみによって生きているのだ、ということをさとりました。」
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- 「神は愛なればなり」(冒頭に引用されている『ヨハネの第一の書』)、「なぜなら神は愛であるから」(最後のミハイルの言葉)
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第2回 ポール・ナース『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』
ポール・ナース Paul Nurse
- 遺伝学者・細胞生物学者
- 1949 年、イギリスの労働者階級の家に生まれる。
- 醸造所などで働いたのち、大学の研究員の職を得る。
- 2001 年、ノーベル生理学・医学賞。細胞分裂の仕組みを発見した。この仕組みは全生命で同じだった。
本の内容
- まえがき~生物学との出会い
- 蝶の姿を見たことが、生命への興味を持つ第一歩だった。
- 細胞
- 学校で顕微鏡を使って細胞を見たことが生物学者を志すきっかけだった。
- 細胞では、細胞膜が重要。
- 遺伝子
- ナースは細胞分裂の周期を決める遺伝子を発見した。cdc2 遺伝子は、いったんゴミ箱に捨てた変異体から発見した。
- 自然淘汰による進化
- 進化の系図は「生命の樹」を作っている。生命には、共通の祖先がある。
- 化学としての生命
- 生命現象の化学の研究は、発酵の研究から始まった。
- 情報としての生命
- DNA の発見から生命情報という観点が生まれた。
- 進化は、情報のアップデート。
- 生命とは何か
- (1) 自然淘汰を通じて進化する (2) 境界を持つ物理的な存在 (3) 化学的、物理的、情報的な機械
- 人間の使命
- 人間は、生命の世話をしなければならない。そのために、生命を理解する必要がある。
第3回 バルファキス『父が娘に語る経済の話。』
2013年、ギリシャの経済危機の中で出版された。2015 年、バルファキスはギリシャの財務大臣になる。
本の内容
- 「資本主義」という言葉を使わず「市場社会」という言葉を使うことにした。
- 市場と経済は違う。市場は、交換をする場所。経済は、人が農耕を始めた時に生まれた。
人は余剰の穀物を倉庫に貯めることになる。その記録のために文字ができる。穀物の貸し借りが生まれて債務ができる。
信用を担保するために国家ができる。債務からは通貨ができる。
- 格差は当たり前ではない。たまたまできるものだ。
- 通貨の元になるのは、貸し借りの証書。借金が経済の基礎。
- 市場社会は、お金ばかりが重視される社会。産業革命をきっかけに、商品ができる。あらゆるものが商品化される。
この流れが始まったのは、大航海時代。大規模な交易が可能になり、海外向けの商品をたくさん作るようになる。
これがいわゆる「囲い込み」。農民は土地を失う一方、自由になった。
- 自由から競争が生まれる。競争に勝つためには借金をしないといけない。すると融資を専門とする銀行家が生まれる。
銀行家がお金を作る方法は、記帳するだけ。
- 経済はなかなか安定しない。勝ち組が調子に乗って失敗すると、恐慌が起きる。『怒りの葡萄』にその様子が描かれている。
人々が飢えていても、農作物の価値を下げないように農作物が廃棄された。
- バルファキスの娘は、コスタス船長に頼まれて海に潜ってあげた。お金には代えられない経験価値がある。
- なんでも市場に乗せればよいというものではない。「すべての民主化」を主張したい。皆で声を上げよう。
第4回 『竹取物語』
『竹取物語』は世界の見方を変える物語。竹取物語には、物語のパターンがいろいろ含まれている:
小さ子物語(身の丈が小さい人が活躍する物語)、長者譚、異常出生譚、婚姻譚、貴種流離譚。
月と地球を股にかけたSF作品とも言える。
物語の進行と解説
物語の進行 | 解説 |
- 竹取の翁がいた。
- ある日、山に入ると、竹の根元が光っていて、中に小さな女の子がいた。
- 女の子は急成長して、「なよ竹のかぐや姫」と名付けられた。
- 翁は結婚を薦めるが、かぐや姫は嫌がる。
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- 「今は昔」=「皆さん、今あなたは“昔”にいます」
- かぐや姫は「本心を知らなければ結婚できない」と言う。結婚によって、翁は経済的な安定を願っているのに対して、
姫は精神的な安定を望んでいる。
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- かぐや姫は求婚者に対して、あるかないかもわからないような宝物を持ってこいと言う。
- 庫持(くらもち)の皇子には、蓬莱山の珠の枝を持ってくるように言う。皇子は、職人に珠の枝を作らせ、
冒険の作り話を語る。しかし、職人たちが製作費を求めて押し掛けて、嘘だとわかる。
- ほかにも4人の男が求婚。皆、失敗する。
- 帝が宮廷に連れて行こうとするが、かぐや姫は光になった。
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- 金、体力、知力もかぐや姫の前では意味をなさない。
- 「きと影になりぬ」の影は光のことだと解釈できる。
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- かぐや姫は、月を見て涙を流すようになった。月を見ていると、世の中のすべてが儚く頼りなげなものに思えてくるのだという。
- かぐや姫は、自分が月から来たのだと翁に打ち明ける。
- 帝は、かぐや姫が月に帰るのを阻止しようとするが無理だった。
- 天人は、天の羽衣と不死の薬を持ってきた。かぐや姫は手紙を書いて、不死の薬とともに帝に贈った。
- かぐや姫は天の羽衣を着ると、人の心を忘れ、月へ帰って行った。
- 帝は、手紙と薬を駿河の山で燃やすように命じた。それ以来、この山は「富士山」と呼ばれるようになった。
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- かぐや姫は人間の気持ちがわかるようになった。人間の世界には悩みや苦しみがあるからこそ愛おしいと思ったのではないか。
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