林芙美子 放浪記

著者柚木 麻子
シリーズNHK 100分de名著 2023 年 7 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2023/07/01(発売:2023/06/25)
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読了2023/07/27

『放浪記』は、森光子の舞台が有名ということくらいしか知らなかったが、解説を聞いて、 粗削りだが若い女性作家の本音があふれた魅力的な作品らしいということがわかった。

ひとつだけ気になる解説がある。著者は、関東大震災の記述があっさりしているのが林芙美子のタフネスを示していると書いているが、 これはちょっと違うと思う。芙美子は、地震の直後、根津から十二社(現在の西新宿の高層ビル街の西、当時は東京市の外の淀橋町)に 向かっているということだが、だいたいまっすぐ歩いて行っているとすると、ほとんど震度5程度で 火災で焼失しなかった場所を通っていると思われる (参考:武村雅之『関東大震災』)。 すると、建物の全潰率もせいぜい 1% のところなので、少なくとも当日はそれほど大きな被害を見ていないはずなのである。 でまあ、わざわざ被害の大きなところを見に行かなかったとすれば、あっさり書かれているのも当然である。 関東大震災で揺れが大きかったのは、小田原~三浦半島~房総半島の一帯で、東京の被害は主に大火災によるものである。 ただし、東京でも下町の低地の揺れは大きかった(震度6~7)。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 「悪」の魅力

『放浪記』基本情報

林芙美子の生い立ち

林芙美子の悪

『放浪記』に見る芙美子の本音

第2回 お人好しの嫌われ者

鋭い男性批判

女同士の連帯

芙美子はお人好しの嫌われ者

第3回 旅と食で生き返る

旅する芙美子

戦争におけるペン部隊の芙美子

食べる芙美子

第4回 「女流文学」を解き放つ

芙美子と母親

芙美子の死

芙美子を不幸から解き放つ