この小説は、ホームズものにしては珍しく、初めて読んだ気がする。新鮮な気持ちで読めた。
本小説は、『緋色の研究』と 似た構成で、第1部で事件が起こって解決し、第2部でその背景となる昔アメリカで主人公が経験した アウトロー退治の物語が語られる。ドイルは、 もともと歴史小説家になりたかったのだそうで、それがこの第2部のようなアウトロー退治物語みたいなものに ロマンを感じてしまう理由なのだろう。本小説は、第1部と第2部の両方で最後にどんでん返しがある。 コナン・ドイルの筆が最も冴えている時期の作品と言えるだろう。
訳注および訳者あとがきによれば、第2部の物語は、ピンカートン探偵社の若きジェイムズ・マクパランが 暴力団モリー・マグワイワーズと闘った話を下敷きにしているとのこと。
この小説のエピローグで、主人公の John Douglas は Moriarty 教授の策略で暗殺されたことになっている。 この小説では Moriarty 教授の存在は余計な気がする。John Douglas を殺さずに、ハッピーエンドでも良かったのにと思う。 それでも、John Douglas は悪党の Ted Baldwin を殺しているから、死なせずにはおけなかったのだろうか。