キャンベル 千の顔をもつ英雄

著者佐宗 邦威(さそう くにたけ)
シリーズNHK 100分de名著 2024 年 7 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2024/07/01(発売:2024/06/25)
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読了2024/07/29

キャンベルが神話の構造を解明した人だということは、前に 松岡正剛「17歳のための世界と日本の見方」(春秋社)を読んだ時に知り、以来、 ときどき物語を読むときその図式に当てはめてみたりしている。今月の番組は、そのより詳しい解説である。

今回の名著の読み方としては、神話の構造に自分の人生の試練を当てはめてみるということになっていた。 第4回の解説を見ると、キャンベル自身、「特別な人間だけが英雄なのではない」と述べていたようで、 小さな個人もまた小さな英雄だと考えていたようである。

もちろん、素直に、人間にはこういう英雄譚を好む傾向があるという人間心理の分析として読んでも 良いだろう。お釈迦様(シッダールタ)の生涯の伝説が典型例として紹介されている。 「出家→降魔→成道→初転法輪」がちょうど「出立→試練→帰還」という神話のパターンに合っている。 シッダールタの物語の成立には、きっと多くの人々が関わっているだろう。そうして人々に揉まれた結果が パターン通りのところに落ち着くのが面白いところである。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 神話の基本構造「行きて帰りし物語」

Joseph Campbell は、人類共通の物語の構造を発見した。

Joseph Campbell (1904-1987)

英雄神話のパターン / モノミス=単一神話論<英雄の旅>

第2回 出立―冒険への合図にどう気づくか

出立のプロセス

  1. 冒険への召命
  2. 召命拒否
  3. 自然を超越した力の助け
  4. 最初の境界を越える
  5. クジラの腹の中

冒険への召命

召命拒否

自然を超越した力の助け

最初の境界を越える

第3回 イニシエーション―試練をどう乗り越えるか

イニシエーションのプロセス

  1. 試練の道
  2. 女神との遭遇
  3. 誘惑する女
  4. 父親との一体化
  5. 神格化
  6. 究極の恵み

試練には外的なものと内的なものがある。

試練の道

女神との遭遇

誘惑する女

父親との一体化

人生の試練

第4回 帰還―社会への還元

帰還のプロセス

  1. 帰還の拒絶
  2. 魔術による逃走
  3. 外からの救出
  4. 帰還の境界越え
  5. 二つの世界の導師
  6. 生きる自由

「帰還」を妨げるもの/帰還の境界越え

現代の英雄とは

新しい神話は生まれるか