フッサール ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学

著者西 研(けん)
シリーズNHK 100分de名著 2025 年 7 月
発行所NHK 出版
電子書籍
刊行2025/07/01(発売:2025/06/25)
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読了2025/08/04

フッサールは、現象学という単語は知っていても著書も解説書もほとんど読んだことはない。 講師の西氏は、そういう難しげなものを可能な限り易しく解説していてありがたいと思う。

とはいえ、最後の回の「現象学で何ができるか」が「哲学対話のすすめ」になっているのは、 そのようなことなら別に現象学と言わなくても良いのではないかという気がしなくもない。 逆に言えば、現象学を現代に生かせる道はそれほど無いということなのかもしれない。 フッサールの考えは エルンスト・マッハの強い影響下で作られたという意味では理解できる。しかし、その後 自然科学が 100 年余りかけて進んでみた後で見ると、マッハのような考え方はとても取れないし、 したがって現象学もあんまり維持できず、そこで学ぶべき点は 「本質を考えるための哲学対話のすすめ」になってしまったのではないだろうか。

「100分de名著」放送時のメモと放送テキストのサマリー

第1回 学問の「危機」とは何か

『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』基本情報

Edmund Husserl (1859-1938)

現象学の考え方

学問の危機

第2回 科学の手前にある豊かな世界

学問の成り立ちと世界の分裂

超越論主義

第3回 現象学的還元によって見えるもの

主客一致の難問

現象学的還元と世界信念

知覚

現象学の御利益

第4回 現象学で何ができるか

本質観取

西流の本質観取のやり方

フッサールの方法を哲学対話用にアレンジしてみた。フッサールだと一人で行っていたことを、 対話で行うことにする。

  1. 問題意識を共有する(知りたいこと、考えたいことを出し合う)。
  2. テーマについての多様な体験例を出し合う。
  3. 体験例の共通項を抜き出す。
  4. 〇〇とは何かを定義する。

幸福とは何かを話し合ってみる

「本質観取」の試みは、人間とは何かを考えることにつながっていく。さらに、 良い生き方をするためのヒント、困っている人を支援するヒントにつながる。

『危機』書の出版に至るまでのできごと

人類の真のあり方は、目標を目指す存在としてのみ可能なものであり、そしてもし、およそその実現が 可能であるならば、それは哲学を通じてのみ(略)実現される。 [第1部第7節より]