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ノート作成中に省略を決めた部分や、年度を変えるときに 内容を入れ替えてなくしてしまった部分

第1章参考:学問分野による地球惑星科学の分類

学問分野によって地球科学を分類することもよくある (本質的ではないので講義では使わない)
(a) 「役に立つ」学問の分類
  測地学 地球上の位置を測ることは、われわれが移動したり
            人工物(人工衛星など)を移動させたりするのに必須
    物理探査学、鉱床学 地下の有用な物質を探る手段
    災害科学 地震災害、気象災害、火山災害の背景の現象の本質を探る
    地球環境学 われわれが生活している空間の物理化学条件を知る

(b) 「手法」による分類
      地球物理学 物理学の応用
      地球化学    化学の応用
      地球生物学(古生物学) 生物学の応用
      地質学      野外における地層や岩石の観察に基づく学問
      etc

(c) 私の専門の地球物理学の中では、研究対象によって分類すると
      超高層物理学、宇宙空間物理学    超高層大気から磁気圏などの研究
      気象学、海洋学                  大気圏と海洋の研究
      地球惑星内部物理学              地球と惑星の内部ダイナミクス(私の専門)
      地震学                          地震の研究
      etc

[2004, 2005 年度 3-5, 2006 年度省略]:火星

とくに、最近アメリカが火星探査を積極的に進めているので、 火星について詳しく解説しよう。 最近の探査車の Spirit と Opportunity に関する話題に絞って解説する。 探査結果も次々に出て来ているので、まだまとめられない段階である。

火星は半径が 3400 km、ということは地球の半分くらい(地球のコアくらい)。 体積は地球の 1/7 くらいで、質量は地球の 1/10 程度である。 そこで、2-5 のビデオの言い方では、ミニ惑星1個分くらいということになる。

最近の火星探査の目標
何と言っても、過去に生命がいた痕跡の発見
そのために、過去に水があったことを確かめる
最終的には、火星に人が住める可能性まで検討してゆく

NASA ホームページに行くと たくさん写真や解説が見られるので、楽しんでください。

探査の歴史 ( NASA 火星探査ホームページによる) [以下、細かすぎるので、適当に端折る]
1964Mariner 4
1969Mariner 6, 7
1971Mariner 9
1975Viking 1, 2
洪水地形 (Outflow Channel) や河川地形 (Valley Network) が 南半球(高地)に広くあることがわかった
1996Mars Pathfinder -- Lander and Rover (Sojourner:逗留者)
1996Mars Global Surveyor -- Mars Orbiter 観測中
河川地形は比較的新しいように見えた
20012001 Mars Odyssey -- Mars Orbiter 観測中
ガンマ線、中性子の観測から、今でも地下に大量に氷が存在することを発見
2003Mars Express (ESA) [JPL/NASA page, ESA page] -- Orbiter and Lander 観測中
着陸機は失敗。可視光・赤外分光計により、水の氷が存在することを確認。迫力あるステレオ画像が撮影されている
2003Spirit, Opportunity -- Mars Rover 観測中
2005Mars Reconnaissance Orbiter -- Mars Orbiter 現在、火星に向って飛行中
これまでより高い解像度の画像が得られるはず

これらの探査から水についてわかっていたこと

河川地形、洪水地形がたくさんある
例:Nanedi Vallis (Mars Global Surveyor の Mars Orbiter Camera)
file: PIA01170.jpg [source: http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA01170]
地下に大量の水がある
Mars Odyssey によるガンマ線、中性子の観測
file: OdysseyOfEx2Cap.mov [source: http://marsprogram.jpl.nasa.gov/odyssey/gallery/video/video.html]
極冠のうち万年氷の部分 (perennial ice cap) は、両極ともに 主に水の氷 (water ice)でできている (補足ノート参照)

topics: 最近の探査車 Spirit と Opportunity による発見

Spirit2004/01/04 Gusev Crater 着陸
Opportunity2004/01/25 Meridiani Planum(メリディアニ平原)着陸

Gusev Crater
南部の高地からマーディム峡谷が延びており、そこから水が流れて 湖になっていたと考えられている。
Meridiani Planum
Mars Global Surveyor で hematite が発見され、水が関連していると考えられた。
Opportunity による成果: 以上のことが水が存在する証拠とされた [こういう地学の論理に注意してもらおう]

表面を覆う soil については 補足ノート参照

写真集

ここで見てほしいことは、地学的研究の進め方にある。 細かい事実は将来どんどん書き換えられるので、あまり重要ではない。 ポイントは、実験ができない科学を実証的にどう進めてゆくか、にある。

(1) 探査の作戦
目標設定(水の証拠の検出)→水があったら何がどこに観察されるかを考える →そのための装置と探査計画の設定
(2) 地学の論理(観察後の論理)
石の組成→化学的にどういう条件だと生成されやすいかを知っている →可能性1、2、...
石の構造→物理的にどういう条件だと生成されやすいかを知っている →可能性1、2、...
その可能性の共通性の高い条件で生成されたのだろうと考える →その条件が昔あったと推測する
(1つの証拠だけでは決定的に言えないことが多いので、証拠を積み重ねる)
(3) 批判的な鑑賞
先に目標があるし、金がかかっているから、目標に合うような結論に 向かうような偏りが推論にはある (ただし、もちろんそうではないように見える論理を使っている)。
本当かどうかの評価は非常に難しい(いろいろな専門知識を総動員する 必要がある)。ちょっと出まかせに近いけれど、こういう結果を見たときに どういう疑問を持ちうるかというと、 とはいえ、別に私は NASA の解釈や宣伝を悪く言うつもりはない。それどころか、 アメリカの力に敬服するばかりだ。

[2004 年度 5-2, 2005 年度省略]:地球史7大事件

参考書:丸山茂徳「46億年 地球は何をしてきたか?」(地球を丸ごと考える2 岩波書店)
旧来の地質時代区分は、硬い骨格を持った生命の誕生と、 引き続く何度かの絶滅事件に基づいている。これは、45億年の歴史を調べようという 立場からすると、余りにも生物に偏っている。実は、生物の歴史としても偏っている。 現在の生物で最も繁栄しているのは、バクテリアである。人間の体には バクテリアがたくさんいる。極端環境にも地底にもいる。 ほんとうは、バクテリアの歴史こそが生命の歴史であり、 骨のある生物などごく一部にすぎない。

そこで、もう少し別の観点からの時代区分を考えるという試みが、 私の指導教官だった熊澤さんとか、現東工大の丸山さんによって なされた(どちらも名大ゆかりの人)。まだ世界では市民権を得ていないが、 地球の45億年の歴史を語るのに便利なので、これを使って語る。

[図:地球史7大事件の図(熊澤図と丸山の造山帯、氷河期の図)]
地球史には歴史を画する7つの大きな事件があったととりあえず設定する。 これを手がかりに歴史を見てゆくという試みだと思って欲しい。 事件で歴史を語るというのも画期的。というのは、漸進説とはっきりおさらばしているからだ。 さて、これに沿って地球の歴史を見てゆこう。

[図:第1事件]
まず、第1事件。これは地球ができた、という事件。これは第2章で概要を話した。 地球の形はだいたいもうここで出来上がった。

[図:第2事件] 次は、第2事件。現在残っている最古の石がだいたいこの時代のものです。最古の石は だんだん古くなってはいるのだが、ある程度の大きさの岩体が残っているのがこのへんが 最古だ。

まず、それより古い岩体がないということは、それより古い時代は隕石などの衝突が激しく、 なかなか地層が残らなかったというふうに考えらる。

それから、38 億年の岩体を良く見ると、現在と余り変わらないプレートテクトニクスが すでにあったのであろうということも分かる。40 億年前の石も、花崗岩という墓石に 使うような石で、これもおそらくプレートテクトニクスがないとできない。そこで、 第2事件のあたりがプレートテクトニクスの始まりだろう。ということは、当時から すでに海があってマントル対流があって、それとともに地表も水平方向に移動していた、 ということになる。そういうわけで、第2事件は地球形成期の大騒ぎが一段落して、 地下の活動が現在とだいたい似たような感じになった時期だと考えられる。

参考:Q&A「38 億年前の岩石に見られるプレートテクトニクスの証拠とは何か?」
それは、付加体と呼ばれるものだ。
[図:付加体]
プレートテクトニクスで、沈み込むプレートを考える。沈み込むプレートの上には 海底で溜まったもの(生物の殻とか泥とか)が溜まっている。これが沈み込むときに 鉋(かんな)で削るように削られて(あるいは、刺身を削って並べたようになって)、 対岸の大陸側プレートにくっつくことがある。これを「付加体」という。 日本列島のとくに西南日本の骨組みはこれで出来ている。 前回、犬山の地層を紹介したが、それは実はそういうものの一部。それが、深海底で たまったものが地表で見られている理由。そういう刺身を並べたような構造が 38 億年前の岩石にも見られている。

参考書:平朝彦「日本列島の形成」(岩波書店)
[Q&A 終り]

生命が生まれたのもおそらくこのころだ。もう少し前からいたのかもしれない。 ひとつの証拠とされているのが、炭素の同位体 (陽子数が同じで、中性子数が異なる原子核)の割合だ。 炭素には 12C と 13C という同位体がある。 生き物が作る炭素化合物は、無機物よりも 13C が少ない。すなわち 軽い同位体が多い。そこで、軽い炭素同位体が多い炭素がみつかると、生物の証拠だと 考える。ただし、無機的にできる可能性もあるので、決定的ではない。でも、 たぶんすでにいたんじゃないか、と思っている人が多い。生命は地球の非常に初期に 生まれた、というわけだ。 また、光合成の起源も最近の丸山さんの見解だと 37 億年頃でかなり古い。

そこで生命の起源について考えてみよう。生命がどこで生まれたかということに関しては 現在いろいろな考え方があるのだが、最も有力な考え方は、深海底の温泉、 つまり海底熱水活動域、にあったのではないかというものだ。 まず、生命を構成する元素組成が海の組成と似通っているということから、 生命は海で生まれたということが一番自然だ。 熱水が起源であるとする根拠は2つある。 (1) 最近の分子進化学の結果からすると、始原的生物は超好熱菌、 つまりすごーく熱いところに住む菌であることがかなり確からしい。 そういう熱い環境というのは、海の底の温泉だ。 (2) 最古に近い生命の化石とみられる 35 億年前のものがあった場所が、 海底で火山活動が起こっているような場所であることがわかってきた。

[DVD : archaean park]
現在でも海底にそのような温泉がある場所がある。たとえばこの DVD の場所だ。 そういう研究に私もちょっとかかわっている。そういう場所では現在も奇妙な生き物が たくさんいる。そういう生き物で目に見えるようなものはもちろんかなり進化した生物で、 原始の生物とはかけはなれたものだが、しかし、こういう場所やこういうところに住む菌を 調べると、最古の生命についての情報が得られるかもしれない。そういうことでたとえば 日本でも現在アーキアン・パーク計画という共同研究が進んでいて、これはその宣伝 DVD だ。 もちろん原始の熱水系はこんなににぎやかではなくて、菌だけの世界だ。そうすると、 変な汚らしいけばけばしい色がついた温泉の様子の方がむしろ近い。

[図:第3事件]
第3事件と第4事件は、非常に激しい火山活動が起こった時代だ。その証拠は、 ジルコンという火山活動のときにできて、しかも安定な鉱物の年代がそこに 集中しているということだ。それから、地質学的にみて古い造山帯の年代も そこに集中する。これの一つの解釈は、マントル対流が上と下の2層に分かれていた 対流が1層になったということだ。前には言わなかったけれど、マントルは詳しく見ると 2層に分かれているみたいで、それをはさんで対流が起こったり起こらなかったりする、 ということがわかっている。そのモードが変わった、ということがあったのかもしれない。

[以下詳しすぎるかもしれず、時間がなければ省く]
そういうことが起こるという理由はいくつか考えられるのだが、 そのうちの一つを話す。これは東大の小河さんの考え方だ。マントルは初めは暖かくて 火山活動が盛んだった。火山活動が起こると石が融けて重い石と軽い石ができる。 重い石は沈んで軽い石は浮くということで、マントルは2つの層に分かれる。 その層の中でそれぞれ対流が起こります。だんだん地球が冷えてくると、火山活動で 重い石と軽い石ができるという作用よりも、重い石と軽い石がかき混ぜられるという 作用が大きくなる。そうすると、対流はマントル全体で起こるようになる。 ほかにもいろいろなことが考えられるのだが、マントルの中で起こっている大きな変化が 地表にも大きな影響をおよぼす。逆に、地表で現在考えられないような大事件が起こると いうことは、マントル対流の大きな変化のせいではないかと想像するということでもある。
[以上2層対流問題]

第3事件のあたりでは、生物界でも重要な事件が起こった。それは、光合成が非常にさかんに なったことだ。ストロマトライトと呼ばれる化石が多くなってきていて、これはシアノバクテリア という光合成生物が作ったと信じられている。そのことによって、海の中の酸素が増えた。 海の中の酸素は海の中の鉄イオンを酸化して酸化鉄を作る。そのようにしてできたこの時代の 酸化鉄の量は膨大で、現在私たちが使っている鉄の原料の鉄鉱石はほとんどその時代に できたものだ。そのようにこの時代のことはわれわれの生活にも関わっている。

次は、第4事件と行くわけだが、実は第3事件と第4事件の間にも時期はあまりはっきりしないが、2つ大きなことが起こっている。

[図:第4事件]
第4事件は、火山活動がやっぱり激しかったのだが、とくに重要なのは、このころ最初の 超大陸ができた、ということだ。超大陸というのは、世界中の大陸の大部分が1箇所に 集まった状態だ。超大陸は、地球の歴史の上で何回かできたことがわかっているが、 これが一番最初である。それ以前の大陸は、現在よりもサイズが小さい。これも、 マントル対流の2層から1層への変化ということと関連しているのかもしれない。

もうひとつ大事なのは、たぶん 20 億年前の前後あたりで大気中の酸素濃度が増えた、 ということだ。海の中で鉄を酸化し尽くして酸素があふれてきた。 酸素が大気中にでてきて、ミトコンドリアが酸素呼吸するようになって、 真核生物がでてきたんではないか、という考え方もある。 この話を聞くと、酸素が出てきて生物に住み良い環境ができたと思うかもしれないが 事実はおそらくその逆。これは地球史最大の 環境汚染だった可能性が高い。なぜか? 酸素は、ものを燃やすほどに反応性の高い物質だから、大気中の酸素は、生物にとっては もともとは猛毒だった。人間にとって酸素は必須ですからそうは思えないかもしれないが、 酸素は基本的には毒で、呼吸する生物はそれを無毒化する装置を備えている。 ミトコンドリアはさらに酸素を利用するというところまでいった。このように、 このあたりの時代は、生物界にとっても現在のような生物が生まれる大きなステップに なっている。

[図:第5事件(丸山・磯崎 図1.8)]
第5事件はたぶん単一の事件ではなくて、8 億年から 5 億年前くらいにかけての 一連の事件だと考えるのが良い。これは、古生代が始まるあたりで、いくつかの大きな事件が 起きている。まず、8億年から6億年前に極端な寒冷化とそれに引き続いて極端な温暖化が 起きたということが2回あったと言われている。寒いときは、いわゆる全球凍結 (スノーボールアース)と呼ばれている現象で、地球のほとんど全体が凍り付いてしまった。 名前は「スターチアン氷河期」と「ヴァランガー氷河期」というふうに付けられている。 これは、NHK スペシャル「地球大進化」を見た人は先月見たはずだ。詳しいことは、 時間があれば次の章でやる。いったん地球が凍ると、二酸化炭素が大気にたまるようになって、 あるとき突然氷が融け初めその次には気温60度とかいうような極端な温暖化が起きたと 言われている。そういう激変期だ。

それから、この時期から海水の量が減り始めたのではないかという説も東工大の丸山さんが 出している。

そういう激変が起こると、生き物なんか死んでしまいそうな気もするのだが、 そうでもなくて、6億年くらい前から結構大型の生物がでてくるようになった。 5億8千万年くらい前にはエディアカラ生物群と呼ばれるひらべったくてブヨブヨしたような 生物が出てきた。さらに5億4千万年くらい前になると堅い殻を持ったような生物が 一気に出現した。これが古生代の始まりで、カンブリア紀の大爆発と呼ばれる。

参考書:スティーブン・グールド「ワンダフル・ライフ」(ハヤカワ文庫)

[図:第6事件]
前に話したように、第6事件はそうやって繁栄した生物が今度は一気に絶滅するという 大事件が起こった。個体数 99 % が死んだかもしれない。いまでは考えられないくらいに 地球上から生物が一掃されたことになる。海底が酸欠状態になったという話をした。 こんなことが起こった理由として、東大の磯崎さんは「プルームの冬」という考えを 出している。当時、地球上の大陸は1ヵ所に集まっていてパンゲアという超大陸が できていた。大きい大陸ができるとそれは地球の中の熱に対しては断熱材の役割を するから、その下が熱くなってくる。やがて、激しい火山活動が起こるようになる。 そうすると噴出物が太陽光を遮って冬のようになるだろう。それを「核の冬」をもじって 「プルームの冬」と称したわけだ。

さて、第7事件は、地球の上のヒトという生物が科学などということをして、 自分とは何か、地球とは何かなどということを問い始める。これも、哲学風に言えば、 地球が地球自身を問うようになった、ということになるだろう。それは、 大事件ではないだろうか?


5-5 大量絶滅と生物の進化

最後の生命の進化に関する話のちょっと詳しいこと

「分子進化の中立説」に関して少し詳しいこと

中立説は、有害な変異を否定するものではなくて、有害な変異は残らない、 というだけ。そのため、機能的制約の多い分子の進化速度は遅くなる。ただし、 この有害無害が環境とは無関係で、その分子の機能が損なわれるという意味だけだ ということが中立説の特徴。

適者生存は最適原理ではないということ

適者生存は、個体やその集団レベルでのみ働く、局所的な適応原理である。 最適原理ではない。

例:何で陸上植物は緑色のものしかないのか?緑色植物は緑色を利用しないので、 最適を考えると、緑色を利用する植物がいても良い。海藻にはそういうのもある。 でも、なぜか陸上植物にはない。これも歴史的な偶然だろう。生物の世界は 最適化などされていない。[この段落、伊藤繁先生の講義より]


5-? 銀河や天体と太陽系のリズム

Alvarez による隕石衝突説が教えてくれたことの一つは、 宇宙現象が地球に影響を与えることがわかったこと、 いわば天変地異の可能性である。天体が地球に刻むリズムに関して いくつか考えてみよう。

以下、考えられるリズムの雑然としたメモ


6-? バイオマスエネルギー

時間があればやっても良いのだが、とてもそんな時間はなさそう。

木材は昔からエネルギー源として使われた。 [Cf. 文明の盛衰と木材の過剰伐採]

現在言われているバイオマスも木材エネルギー。昔とは何が違うのか?

北欧の取り組み


7-1 自然災害のいろいろ

日本の防災予算に関するメモ

防災に関連して、よく地震予知が槍玉に上がるが、 防災関係の予算は以下のように使われていることには注意しておく

防災関係予算の内訳 [H17 防災白書による]

種類内容平成 13 年度平成 15 年度
国土保全河川改修、砂防ダムなど 56% (2.2 兆円)51% (1.6 兆円)
防災安全な街づくり 27% (1.1 兆円)26% (8000 億円)
災害復旧 16% (6000 億円)22% (7000 億円)
科学研究地震予知を含む 1% (500 億円)1% (400 億円)

土建国家の面目躍如で、国土保全に最も大きな予算が付いている。


7-5 日本の内陸地震と活断層

地震発生確率について

数字にはあまり意味はない(防災セミナー:鈴木講演)。 とはいえ、全国規模で防災対策を決めるときの指針にはなる。 全国規模での判断の参考資料としては良いが、個々の地域の問題としては 意味がない。(防災セミナー:藤原講演)


[2004 年度 7-6, 2005 年度省略]:地形は災害の傷跡

地形から災害を読む

地形は災害の跡である、ということを言って終わりにしたい。
とくに濃尾平野を例に取る
[図:濃尾平野のなりたち]
平野:洪水が平野を作っている(日本の場合)
例:濃尾平野そのもの
山:山が出来るとき、地震が起こったり、火山噴火が起こったりする
例:養老山地と養老断層と濃尾平野の関係
谷:谷が出来るとき、崖崩れが起きたり、鉄砲水が出たりしている
例:細かい谷や崖地形

地震と風水害に対する危険箇所

地震と風水害に対する危険箇所には共通するものも多い。

地形図や土地利用図を見よう。

      国土交通省 土地・水資源局 国土調査課
          http://tochi.mlit.go.jp/tockok/index.htm
      [そこから取った図
          223001.jpg  愛知県土地分類図
          2312L.jpg  名古屋北部地形分類図
          2312G.jpg  名古屋北部表層地質図
          2311L.jpg  名古屋南部地形分類図
          2311G.jpg  名古屋南部表層地質図
          523004.jpg  愛知県災害履歴図]
      名古屋付近は、東海豪雨のおかげで国土地理院ホームページに電子形式で地形分類図がある
          http://www1.gsi.go.jp/geowww/nagoya/nagoya_landcondition.html
      [そこから取った図
          hanrei_1.jpg  凡例
          nagoyananbuNE1.jpg  名大周辺
          nagoyahokubuSE4.jpg  名古屋城周辺
                                   名古屋城は台地の端
                                   旧市街地は台地に作られた
          nagoyahokubuSW2.jpg  新川・五条川・庄内川合流点付近(東海豪雨)
                                   自然堤防:昔は宅地
                                   後背湿地:昔は田んぼ
          nagoyananbuNW4.jpg  日光川河口付近:干拓地]

地形図や土地利用図を見るときのポイントには以下のような点がある。

(1) 近くに地震を起こす断層は無いか?(地震のみ)
参考にすべきデータ
(2) 地盤の脆弱地域〜洪水の危険地域
沖積平野
沖積平野は、過去1万年の間に洪水が起こったことを示す (日本の平野は洪水で土砂が運ばれることで形作られている)。
沖積平野は地盤が弱く振動が増幅されるし、液状化の危険も高い。 とはいえ、兵庫県南部地震のポートアイランドのように、柔らかすぎて 人的被害がそれほど大きくならなかったところもある。 ただし液状化は起こった。液状化はライフラインを破壊するので、 もちろん良いわけではない。
同じ平野でもちょっと高度の高い洪積台地は比較的安全。 可能なら、地下構造図を探して沖積平野かどうかを確かめるべし。
谷地形、河川の近く
谷地形は、現在川がなくても、川の流路であったことを示すことが多い。
地名に水や谷の関係したものが残っていることでわかることもある(例:渋谷、溜池)。
鉄砲水等の危険
津波・高潮の危険地域
崖と急斜面
建物の危険(とくに地震)
しかし、危険がある場所は人が住み着く場所でもある(benefit もある)
平野:洪水は肥沃な土地を生む e.g. 輪中
川の近くは普段は景色が良く気持ちが良い(ドブでなければ)
海岸や河岸: water front; 景色も良い
崖:崖の上は景色が良い
risk と benefit を良く天秤にかけよ(私は住むことをおすすめしない)。

ハザードマップ

ハザードマップは危険地域を専門家が教えてくれているもので、 そこで危険とされているところにはできるだけ住まないようにしよう。 住む必要があるときは、十分に対策を取っておく。

ハザードマップ:国立国語研究所の案(2004/06/29 のニュース)では、 「災害予測地図」「防災地図」という日本語を充てる。

ハザードマップ、活断層図等は、 阪神大震災(1995)、北海道南西沖地震(1993:奥尻で大被害)、雲仙噴火(1990)など をきっかけにして一般化してきた。 それ以前は、土地の値段に影響する、観光客が減る等の理由で作られてこなかった。 作ろうとするだけで地元から猛反発を受けた。今や意識が変わった。 そんなことを言っていられない。 [情報源:防災セミナー(鈴木、藤原講演)]

ハザードマップを活用しよう。たとえば、自分で住まいを決めるとき、 都市計画を立てるとき。

ハザードマップがないときも、ある程度の知識が自分でだいたいわかる。そこで 自分でどういう危険があるか判断しよう。逆に、すでにあるハザードマップを 鵜呑みにしない必要もある。理由

  1. 地震や火山のハザードマップはある特定の地震や火山噴火の起こり方を 想定している。その想定外のこともある程度考える必要がある。
  2. まじめでない自治体が丸投げでハザードマップを作る場合、圧力がかかっている 可能性がある(土地の値段が下がるからここは危険地帯にするな、など)。それを 見破る必要がある。

7-? 火山防災

火山災害に対するハザードで考えるべき要素には以下のようなものがある。
(1) 活火山が近くにないか?
近くにあれば基本的に危険な可能性がある
(2) 活火山の火山噴出物の上にあるか?
火山噴出物の上にあれば、それは最近 100 万年間くらい以内に噴出物が
かぶったことを示す。【火山地質図を見ればわかる】
(3) 土石流災害は川の下流にまで被害が及ぶことに注意
この場合は、風水害と同様の危険性がある。
[例:十勝川、御岳、浅間山]
(4) 例外的に、被害が広域に及ぶ場合もある
例:島原大変、「死都日本」
この場合は、リスクの予測が困難(ふつうハザードマップにもならない)

とはいえ、火山の危険がある場所に家を建てる選択はあると思う。 そういう場所は、観光地だったり、景勝地だったり、温泉だったりという benefit がある(たとえば、草津温泉は火砕流の上にある)。一方で、 risk はある程度回避できる。というのも、ある程度噴火の予測ができる場合が 多いので(火山によるが)、警報がでた途端に逃げるつもりがあれば、 死なずにすむ可能性が高いからである。ただし、その場合でももちろん財産は 失われる。その得失をどう考えるかである。 (Cf. 風水害もある程度予測はできるが、風水害は頻度が高いので、いちいち 逃げてはいられないという点が異なる。)