名探偵コナン 57～59 巻

• 新木張太郎：右足骨折で入院している患者
• 楠田陸道：頚椎捻挫で入院している患者
• 西矢忠吾：急性腰痛で入院している患者
• 中道：帝丹高校サッカー部員

蘭によると、本堂瑛祐に連絡がつかなくなったという。瑛祐は、父親に関する何かの手がかりを杯戸中央病院で見つけたと言っていたらしい。 コナンは驚いて、そのことをジョディに伝えに行く。

ジョディによれば、瑛祐の父親は CIA の諜報員のイーサン・本堂であることがわかったという。彼は、４年前、水無怜奈に瓜二つの 女に殺されたという証言があった。

ということは、杯戸中央病院に CIA が探りを入れている可能性があるということで、コナン、ジョディ、ジェイムズは病院に向かう。 しかし、それは話がおかしいと思ったコナンは、蘭にもう一度その手がかりが何だったかを確認する。すると、それは 瑛祐の父親が打っていたメールアドレスのプッシュ音と同じ音を病院で聞いたということだった。ということは、 病院にいたのは CIA ではなくて、黒の組織の仲間ということになる。このことは赤井秀一にも伝えられる。

病院で本堂瑛祐に会ったという看護師を訪ねて話を訊いてみると、本堂瑛祐のほかに水無怜奈のことを訊きに来た入院患者がいたという。 さらにその看護師によると、瑛祐は大阪の事故で手術をする前に、東京でも白血病の大きな手術をしたという。

黒の組織の仲間かもしれない怪しい入院患者は、看護師はちゃんと顔を見ておらず、新木、楠田、西矢のうちの一人ということに絞り込めた。 そのことは水無怜奈の警護をしている捜査官にも伝えられた。水無怜奈の意識は戻っていて、そのことを水無も聞いていたことが読者には明かされる。

新木、楠田、西矢のうちの誰が黒の組織の一員かを探るために、コナンはそれぞれの部屋に入ってわざと転んで携帯を取ってもらう。 そのようすをこっそりビデオに撮って、ジョディ、ジェイムズ、赤井に見せる。赤井とコナンは、その３人の反応から、楠田こそが 黒の組織から様子を探りに来た偽患者だと推理する。

楠田が怪しい行動をしたので、FBI はそれを追うが、病院から逃げ出されてしまう。 コナンは予め楠田の携帯を水につけて壊しておいた。楠田の車を赤井とコナンが車で追う。 楠田は追っているのが赤井だと気づき、逃げられないと思って拳銃で自殺する。 楠田からの連絡が無くなった黒の組織がやがて病院にやってくることが予想される事態となった。

このエピソードに関しては、サンデー公式データベースに 第57巻 File11 を書き落としているという誤りがある。

概要は以前に書いたので、ここでは いくつか赤井秀一と水無怜奈に関するポイントを書いておく。

赤井秀一は、5 年前から 2 年前まで諸星大（コードネーム「ライ」）の名前で黒の組織に入り込んでいた。 そのとき恋人だった宮野明美（偽名：広田雅美）は、組織によって数ヶ月前に殺された。 この事件は第 2 巻で描かれている。ということは、2 巻から 58 巻まで 数ヶ月しか経っていないという設定である。[参考： 「コナンは何年生？名探偵コナンの謎に迫る！」]

本堂瑛祐が水無怜奈の病室に入る。最初、瑛祐は水無が自分の姉の瑛海（ひでみ）と思ってはいないが、 水無が目を開けて「瑛ちゃん」と呼びかけたことから姉だと分かる。 水無の血液型が AB 型で、瑛祐の血液型が O 型、そしてかつて瑛海が瑛祐に輸血をしたことがあるという事実から、水無と瑛海は別人であると皆が思っていた。 しかし、瑛祐が生まれた時の血液型は O 型であったものの、白血病で姉から骨髄移植を受けたために、瑛祐の血液型は、その時以来 AB 型に変わっていたのだった。 骨髄移植は、HLA という白血球の型が一致すればできて、赤血球の型はドナー由来のものに変わるものであるらしい [参考：神戸骨髄献血の和を広げる会]。 そのことを瑛祐自身が知らなかったので、話が合わなかったのだ。

水無怜奈とその父親のイーサン・本堂は CIA の諜報員で、黒の組織に入り込んでいた。それがバレそうになったので、 水無が CIA 諜報員のイーサン・本堂を撃ち殺したことにするという筋書きでイーサン・本堂は自殺した。

• イリーナ・パーマー：タレント事務所秘書
• ハル・バックナー：容疑者
• トビー・ケインズ：容疑者
• 須内廉治：外国人タレントプロダクション社長

水無怜奈は、FBI に瑛祐の保護プログラムを依頼する代わりに、黒の組織に再び潜り込むことを受け入れた、ということが明かされる。

阿笠博士と少年探偵団は、ニュー米花ホテルのランチバイキングに行く。 そのとき、高木刑事が現れて、2～3 分前に外国人タレントプロダクション社長の須内が同じホテルの 39 階で殺されたとコナンに教える。 コナンの機転で、容疑者を絞り込むことができて、ホテル内にいた外国人が連れて来られる。それは、ハル・バックナー、トビー・ケインズ、キャメル捜査官だった。 さらに、秘書のイリーナ・パーマーも容疑者である。殺された社長は、メモ用紙に Bring my tux（タキシードを取ってきてくれ）と書いた形跡があったが、 そのメモ自体はなくなっていた。

一方、水無怜奈は、ジンから赤井秀一を殺すように言われる。赤井を一人で呼び出せと言われて、赤井に来るように電話する。 場所は来葉峠（らいはとうげ）だ。

二年前、キャメルはへまをして、宮野明美が殺される原因を作ったことが明かされる。

コナンは目暮警部に、容疑者を椅子の前に立たせて「しらんぷり」と言う、という奇策を授ける。英語に慣れている人なら、 それを Sit down, please. と聞くはずだというわけだ。すると、トビー・ケインズだけが座らなかった。 果たして、彼が犯人だった。彼は英語があまりわからないので、メモの意味を後で確かめようと思って、メモを持っていた。 彼は、つきあっていた彼女が社長の下で過労死し、社長は彼女の弟にまで責任を負わせる不当な契約をしていたことから、契約書を奪おうとしたが、 その場にないことが分かったので、秘書に見つかることをおそれて銃を撃ってしまったのだった。

一方、水無怜奈は、来葉峠で赤井秀一を撃つ。赤井の車は炎上し、焼死体が見つかる。その遺体の指紋は赤井秀一のものだった （とされたが、後から違っていたことがわかる。）

• 葉坂皆代：美容師
• 永作司朗：格闘家

概要はすでに書いたので、ここでは、 トリックの要となる死体をゴミ捨て場に投げ捨てる方法に注目する。

カギは、ドサッ、ガツン、カラカラという音が順にしたというコナンの証言である。

犯人の葉坂は、スクーターに釣り糸を結び付け、その糸をガードレールのポールに回してから、先をキャスター付きの 椅子にくくりつけた。その椅子の上に死体を置き、ヘアサロンからコンビニに向かってスクーターを走らせた。 それは死体があったゴミ置き場と反対方向だった。すると、死体を乗せた椅子はガードレールに激突して、死体は 下にあるゴミ置き場に落ちるという寸法だ。

実際こんなにうまくいくかという疑問が残る。使われているのは袖なしの事務用椅子だ。その上に不安定な死体を乗せて 横に振り落とさずに引っ張っていけるような気がしない。

• 虎田直信：虎田家当主
• 虎田義郎：虎田家跡取り
• 虎田達栄：直信の妻
• 虎田繁次：直信の息子
• 龍尾為史：龍尾家当主
• 龍尾康司：龍尾家娘婿
• 龍尾盛代（しげよ）：為史の母
• 龍尾景（あきら）：為史の息子
• 龍尾綾華：景の妻
• 甲斐玄人：６年前に死んだ巡査
• 虎田由衣：義郎の妻

概要はすでに書いたので、ここでは、 モチーフとして出てくる「風林火山」についてまとめる。

このエピソードでは、連続殺人は風林火山になぞらえて実行される。その風林火山の元は、『孫子』の軍争篇の一節 ということで、ネットを検索すると 全文載っている。そこから引用するなら

故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸權而動。

故に其の疾きこと風の如く、
其の徐（しず）かなること林の如く、
侵掠すること火の如く、
動かざること山の如く、
知り難きこと陰の如く、
動くこと雷震の如く、
郷を掠（かす）めて衆を分かち、
地を廓（ひろ）めて利を分かち、
権を懸けて動く。

1. 第１の殺人--甲斐玄人--陰--崖から馬ごと落ちて落ち葉に隠れる
2. 第２の殺人--虎田義郎--風--竜巻に飛ばされる
3. 第３の殺人--龍尾康司--山--体を縛って土に埋めて撲殺
4. 第４の殺人--龍尾綾華--林--森の中で猿轡をされ木から吊られる
5. 第５の殺人--虎田繁次--雷--電車の架線に釣り竿が触れて感電
6. 第６の殺人（未遂）--龍尾景--火--放火で焼死（の予定だった）