ゴルフ場殺人事件

著者Agatha Christie
訳者田村 義進(よしのぶ)
シリーズクリスティー文庫
発行所早川書房
電子書籍
電子書籍刊行2011/12/10
電子書籍底本刊行2011/07
原題The Murder on the Links
原出版社イギリス版 The Bodley Head; アメリカ版 Dodd, Mead and Company
原著刊行1923 (イギリス版・アメリカ版とも)
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読了2023/11/10
参考 web pages Wikipedia「ゴルフ場殺人事件」
Wikipedia「The Murder on the Links」
ゴルフ場殺人事件 in 「名探偵ポワロ」データベース
Wikipedia「名探偵ポワロ」
Wikipedia -- List of Agatha Christie's Poirot episodes
Wikipedia -- Les Petits Meurtres d'Agatha Christie

Poirot-Hastings 作品としては『スタイルズ荘の怪事件』に次ぐ2作目、Christie の作品としては 『スタイルズ荘の怪事件』『秘密機関』に次ぐ3作目という初期の作品である。 奇しくも今年は本作品が出版されてから 100 年目になる。

Poirot 初期長編の特徴は、『スタイルズ荘の怪事件』や『邪悪の家』がそうだけれど、 複数の悪い思惑や良い思惑が絡まり合って、練りに練った複雑なプロットが進行することである。 Poirot もわりと良く動く。これが中期になると、『もの言えぬ証人』や『杉の柩』に代表されるような Poirot がひたすら関係者に 話を聞いて回るだけで謎を解き、あまり複数の話を絡めない洗練されたスタイルに移っていく。

とくに本作品は、Hastings や Giraud 刑事が何度も見当外れの推理をして、読者を間違った推理にいざない、 読んでいると何度もどんでん返しにあう。さらに、この作品では Hastings が惚れっぽく、Cinderella と Marthe Daubreuil に恋心を抱いて、失態を演じる場面が何度もあるのがユーモラスである。 それら二人は事件とも深いかかわりがあって、よく練られたプロットになっている。 最後に上手に勧善懲悪の図式とハッピーな2組のカップルで終える所も見事である。 クリスティの出世作で、初期長編の傑作と言って良いのではないかと思う。 とはいえ、次の Poirot もの長編の『アクロイド殺し』が別の意味で有名すぎて、その陰に隠れてしまい、 一般的な認知度は低いのだが。

あらすじと英語・文化的背景メモ

以下、ページ番号は、kindle 版クリスティー文庫 (全 299 ページ) に基づく。

1 旅の友 A Fellow Traveller

Hastings がパリからロンドンに帰る途中、カレー急行のコンパートメントで Cinderella という若い女芸人と言葉を交わす。

Hell! (p.9)
田村訳では「くそったれ!」となっている言葉。Cinderella が最初に発した言葉である。

2 依頼状 An Appeal for Help

フランスの Merlinville-sur-Mer の Villa Geneviève に住む富豪 P.T. Renauld から Poirot に 依頼状が届く。急を要するようだったので、Poirot は Hastings とともに直ちにフランスに向かう。

Merlinville-sur-Mer (p.19)
事件の起こった町。架空の町のようである。Calais と Boulogne の中間あたりにあると書かれている。 Calais の南西 20 km くらいか。
the Plymouth Express mystery (p.24)
過去の事件に関する言及。といっても、短編 The Plymouthe Express の初出は 1923 年 4 月で、 本書の出版とほぼ同時期である。クリスティー文庫では短編集『教会で死んだ男』に収録されている。
the Cavendish Case (p.24)
これも過去の事件『スタイルズ荘の怪事件』への言及。

3 ジュヌヴィエーヴ荘にて At the Villa Geneviève

P.T. Renauld はすでに殺されていた。死体は掘られたばかりの穴の中に横たわっていた。刺殺だった。 死亡推定時刻は前の日の深夜 2 時頃だった。家政婦の Françoise は、昨晩 Madame Daubreuil が Renauld 氏 を訪ねてきたと言う。メイドの Léonie Oulard は、昨晩女性が訪ねてきたのは確かだがそれは Madame Daubreuil ではなかったと言う。

Yeas—yeas—but for Gaud's saike go nauw! (p.39)
メイドの Léonie によるフランス訛りの英語 "Yes, yes, but for God's sake go now!"。 Yes のエがおそらくフランス語の閉じたエ (é) に、God の開いたオと now のアウがフランス語の閉じた長いオ (au) に、 sake のエイがおそらくフランス語の開いたエ (ai) になっていることがわかる。 イギリス人にはフランス人の英語の母音の訛り方が気になるということだろうか。 田村訳では、この母音の変化を表現するのが難しかったと見えて、子音の変化として表現している。 「わかっちゃ、わかっちゃ。頼むから、ひょうのところふぁ帰ってふれ。」

4 “ベラ”からの手紙 The Letter Signed "Bella"

死体のコートのポケットには Bella なる女性からの恋文が入っていた。 Renauld 氏の遺言状によれば、遺産のうち千ポンドは秘書の Stonor 氏に、残りは妻の Eloise に行くことになっていた。 Poirot は Renauld 氏の書斎の敷物の下から小切手の切れ端を見つけた。受取人の名前は Duveen のようだった。

His sharp, birdlike eyes darted here and there (p.48)
田村訳では「ポアロは小鳥のような鋭い視線をあちこちに投げかけた。」となっているが、ここは「小鳥」では なく、鷲や鷹ではあるまいか。
He wore his overcoat very long (p.52)
田村訳では「ムシュー・ルノーはいやに大きいコートを着ているな。」となっているが、ここは「大きい」 というより、丈が長いということではあるまいか。

5 ルノー夫人の話 Mrs. Renauld's Story

Renauld 夫人は、二人の男に襲われたと証言した。一人は背が高く、もう一人は背が低くてがっしりしていた。 彼らはスペイン語を話していた。Renauld 氏に秘密の何かを渡すように迫っていた。Renauld 夫人は、 夫の遺体の確認をすると、気絶した。

This was made from a streamline aeroplane wire (p.62)
ここの This は田村訳ではナイフとなっているが、原作で直接指している語は短剣 (dagger) である。 とはいえ、本文中でも paper-knife のようなという形容がしてあるので、訳者はナイフで統一しようと決めたのだろう。 原作では dagger と言っていることが多いが、Suchet 版テレビドラマでは knife と言っている。 いずれにせよ、両刃タイプの細身の短剣だったということだろう。a streamline aeroplane wire は、 田村訳では「流線型の飛行機のケーブル」としてあったので、ふにゃふにゃ曲がるケーブルでどうやってナイフを 作るのだろうと不思議に思った。ネット検索してみると、streamline wire とは、複葉機の骨組みを作るのに使う棒で、 断面が流線型をしているもののようだ。したがって、streamline wire はふにゃふにゃ曲がるものではなく硬い棒で、 その流線型の断面を持ち手に生かして dagger を作ったということであろう。

6 犯行現場 The Scene of the Crime

犯行現場を見に行くと、そこはゴルフ場の縁だった。死体は、ゴルフ場の作業員が発見したのだった。 そこでは Giraud 刑事 (detective) が捜査をしていた。Poirot は鉛管に興味を持つ。Poirot は、さらに、 死体がどうしてこんなに発見されやすいところに置かれていたのか訝しく思う。

ゴルフ場 (p.68)
小説の題名の「ゴルフ場」は the links という語だったが、本文中で最初にゴルフ場が出てくるところでは a Golf Course となっている。ただし、次にはそれを受けて the links と言っており、複数形の名詞として 扱われているのが面白い。英和辞書(ジーニアス英和大電子版)によれば、単数扱いと複数扱いの両方が あるようである。なお、links とは、 海岸付近のゆるくうねった地形に作られたゴルフ場を指すようである。

7 謎のドーブルーユ夫人 The Mysterious Madame Daubreuil

Poirot は、花壇の足跡と庭師の足跡に興味を持って、何やら調べる。次に、Madame Daubreuil に 話を聞きに行くが、たいした話は聞けなかった。Poirot と Hastings がホテルに向かっていると、 Daubreuil 夫人の娘の Marthe が追ってきて、しきりに容疑者の名前を聞き出そうとした。 Marthe が戻った後で、Poirot は Hastings に、昔どこかで Madame Daubreuil の写真を見たことがあると言う。

you will have one bee less in your bonnet now (p.77)
to have a bee in one's bonnet で「奇妙な考えに取り憑かれている」という意味の慣用句で、 それをもじって Hastings が Poirot に言った言葉。「君の考えていることはよく分からないが、 そのうちの一つは解決したみたいだね。」というような感じの意味になる。
We know where our Samsons are weak, don't we? (p.78)
サムソンの泣きどころ」(田村訳)とは、男は愛する女性からの懇願ですぐに秘密を漏らしてしまうということ。

8 意外な再会 An Unexpected Meeting

翌朝、屋敷で、Léonie に Renauld 氏が癇癪持ちだったという話を聞く。Poirot が屋敷で待っていると言うので、 Hastings は一人で散歩をする。ゴルフ場に行ってみると、カレー急行で出会った Cinderella に偶然会う。 Cinderella が求めるままに、Hastings は彼女に死体発見場所と死体とを見せてしまう。

he was like a thundercloud all day! (p.89)
thundercloud は恐ろしいものの比喩で、辞書によれば something threatening, gloomy, or expressive of anger (Webster's Third New International Dictionary) だそうである。今の文脈では、Renauld 氏はご機嫌斜めで怒鳴り散らしていた、 ということのようである。日本語だと「雷親爺」に相当するだろうか。
You don't mean -- that you're in on that? (p.92)
「まさか―まさかあの事件に関係してるんじゃないでしょうね」(田村訳)。日本語の「関係している」からは 思いもつかない to be in という表現である。

9 ジローの手がかり M. Giraud Finds Some Clues

Giraud 刑事は、犯行現場近くから南米の煙草とマッチを見つけて来て、皆に見せる。 Poirot は、昔似たような事件があった気がすると述べる。

If a man commits a crime, any other crime he commits will resemble it closely. (p.107)
一人の人が犯す犯罪はどれも似通ったものになると Poirot は言う。犯罪者の心理分析を得意とする Poirot らしい言葉である。

10 ゲイブリエル・ストーナー Gabriel Stonor

長身で引き締まった体格の秘書 Gabriel Stonor がやって来た。彼は Renauld 夫妻がおしどり夫婦だったと 強調した。彼は Renauld 氏が Madame Daubreuil からゆすられていたのではないかと言う。Renauld 夫人が やって来て、Madame Daubreuil が Renauld 氏の愛人だったのではないかという疑いを認めた時、Stonor は 心底驚いたようだった。

The old man never so much as looked at a petticoat. (p.113)
秘書の Stoner が Renauld 氏が断じて浮気性ではなかったと言った言葉で、直訳してみると 「ご老体は、ペチコートの方を見ることさえありませんでした。」である。女性を性的な目で見ることが to look at a petticoat と表現されている。
They actually fancy that Mr. Renauld was carrying on an intrigue with a Madame Daubreuil (p.118)
訳してみると「この人たちは、ルノー氏がドーブルーユ夫人と密通してたなどと空想しているんですよ。」 ということで、不義密通を上品に言う言葉が intrigue(第1の意味は、陰謀や策略)らしい。 この章で出てくる関連語としては、mistress(愛人)、love affair(情事)がある。

11 ジャック・ルノー Jack Renauld

Renauld 家の息子の Jack が帰ってきた。南米に行くはずが、船の故障で Cherbourg で足止めをくらい、 そのとき新聞記事で父親の死を知り戻ってきたという。パリに出発する前夜、父親と喧嘩をしていた原因が Marthe Daubreuil だったことがわかる。Jack は Marthe と結婚したいと言ったが、父親に猛反対されて 喧嘩になったという。凶器の短剣を Jack に見せようと Bex 署長がそれが置いてあるはずの物置小屋に行くと、 無くなっていた。Hastings が Cinderella に死体を見せた時に鍵を閉め忘れていた間に盗られたらしい。

I lost my head, (p.126)
lose one's head は「理性を失う」とか「分別を失う」などといった意味。単純に訳せば「ぼくはかっとなって」、 田村訳では「ぼくは癇癪玉を破裂させ、」と工夫してある。
it must have been in answer to that that I made the remark about ... (p.126)
田村訳では「売り言葉に買い言葉で、(中略)といった言葉を」と工夫して訳してある。 単純に訳すと「ぼくはそれに答えて…などとと言ってしまったのでしょう」となるが、それでは喧嘩っぽくないので、 田村訳のような工夫が必要だということが分かる。

12 ポアロの説明 Poirot Elucidates Certain Points

ホテルに戻る道中、Poirot が Hastings にいくつかのポイントを語る。(1) Renauld 夫人は明らかに何かを 隠している。(2) 腕時計が2時間進んでいたことは、おそらく犯行時刻が深夜 0 時頃だったことを意味する。 もしそうなら、犯人は犯行後最終列車でどこかに行った可能性が高い。(3) 犯人は窓から出て行き、 花壇の足跡を熊手で消したのだろう。窓の下の花壇に庭師の足跡も無かったことは、そのことを示唆する。

his cryptic allusion (p.143)
「ポアロの思わせぶりなほのめかし」(田村訳)。Poirot はよく Hastings に思わせぶりなほのめかしを言う。 軽率なところのある Hastings に何でも話すわけにはいかないということだろうが、それは同時に、 読者に真相を最後まで伏せておいて丁度良いタイミングで出すための工夫であるはずだ。

13 不安そうな目をした娘 The Girl with the Anxious Eyes

Poirot は Hastings を置いて Paris に行く。Hastings が Villa Geneviève に行くと、隣の Villa Marguerite の庭で Marthe と Jack が話しているのが聞こえる。Jack は結婚したいと言っているが、 Marthe は不安そうな表情をしていた。翌日、Villa Geneviève でまた人殺しがあったというニュースが飛び込んできた。

Journeys end in lovers' meetings (p.145)
シェイクスピア『十二夜』第2幕第3場で、 道化が歌う6行+6行からなる恋の歌の中の5行目である。 ただしシェイクスピアでは meeting と単数形のようである。 いくつかの和訳を集めてみると、
  • ほッつきあるくは、/好いた同士がめぐりあふまで。(坪内逍遥訳
  • 旅路の果ては恋の逢瀬(小津次郎訳、岩波文庫)
  • 旅の終わりは、きみ慕う/思いも切ない胸のうち。(小田島雄志訳、白水社)
  • 旅の終わりはこの腕の中/いま再度(ふたたび)の巡り合い(松岡和子訳、ちくま文庫)
  • 旅の果ては/お互い恋をする頃(河合祥一郎訳、角川文庫)
となっている。ただし、行ごとに英語と日本語が対応しておらず、上の坪内訳は4行目後半と5行目、 小津訳は5行目、小田島・松岡・河合訳は5行目と6行目である。 本小説中では Poirot が Hastings をからかうのに使っている。そこで、上の5つの訳のうちで 本小説中で使うのに相応しいのを選ぶとすれば、小津訳だと思う。「旅路の果ては恋の逢瀬か」とでもすれば、 七七調で、「赤城の山も今宵限りか」みたいな感じで芝居がかって言うのに丁度良い。

14 第二の死体 The Second Body

Hastings が Villa Geneviève に駆けつけてみると、Giraud 刑事が死体の周りを調べていた。 死体の身元は不明で、胸を刺されていた。短剣には女性の髪の毛が付いていた。Madame Daubreuil の 髪の毛のようだったが、本人は全く知らないと言う。Durand 医師の見立てでは、死亡推定時刻は 48 時間以上前だった。

well-to-do (p.157)
「裕福な」という意味。この単語は 1794 年から使用例がみられるらしい。同じ意味の似た表現として、 それ以前から well to live, well to pass というものがあったらしい。

15 写真 A Photograph

Poirot が昼過ぎに Paris から帰って来るというので、Hastings は駅まで迎えに行く。 そこで、駅のポーターと話をしていたところ、Jack Renauld は犯行の日の深夜、Merlinville 駅に 戻っていたことが分かる。その後、Poirot が着いたので、新たな殺人があったと言うと、Poirot は驚愕した。 Poirot はしばらく考えて、Hastings が概要を話す前に概要を言い当てた。Poirot は、 Villa Geneviève に行って死体を見るとすぐ、その男は癲癇の発作で死んで、その後で短剣で刺されたのだと言う。 Durand 医師はこれに同意する。ホテルに戻ると、Poirot は Hastings に昔の新聞記事を見せる。 そこには悪名高き Madame Beroldy の写真があったが、Madame Daubreuil の若き日の姿であることに間違いなかった。

驚きで口をあんぐり (pp.166-167)
3つの表現が用いられている。Poirot が殺人の話を聞いて驚愕した時は、まず、His jaw dropped. となり、 次に He stared at me open-mouthed. となった。次に Hastings が Poirot の推理に驚いたときは、 It was my turn to gape -- and gape I did. となった。

16 ベロルディ事件 The Beroldy Case

20 年ほど前 Arnold Beroldy という中年男が刺殺される事件があった。夫人の Jeanne は美しく、 夫人に好意を持っている男性に Georges Conneau という弁護士と Hiram P. Trapp という富豪がいた。 事件が起こると、夫人が Trapp と結婚するために Conneau を唆して夫を殺させたのではないかと疑われた。 しかし、裁判では Madame Beroldy が雄弁を発揮して無罪を勝ち取った。

It was a touch-and-go affair. (p.178)
「じつにきわどい離れ業だった。」(田村訳)。OED で touch and go を調べてみると、まず名詞として 今でも使われる意味に以下の3つがある。
  1. ちょっと触ってすぐにいなくなるような動作。素早い瞬間的な動作。[16世紀から]
  2. 岩礁や他の船に軽く衝突してもそのまま航海を続けること。もっと一般的に、将来大惨事につながる可能性のある危険な状態。[19 世紀から]
  3. 飛行機が着陸してすぐに離陸すること。[20 世紀半ばから]
ここでの用法は、上の第2の意味と関連した形容詞で、「結果がどうなるかわからない、惨事や失敗をもたらす可能性のある」という意味。

17 さらなる捜査 We Make Further Investigations

Hastings は Madame Daubreuil が犯人だと早合点するが、Poirot は動機が無いとたしなめる。 Poirot は、事件は2つあるのだと言うが、詳しくは説明してくれない。Poirot は Jack Renauld に 仕事を頼んで Villa Geneviève から遠ざける。

We talk a little at cross-purposes. (p.184)
「どうも話が噛みあわないね。」(田村訳)。辞書(ジーニアス英和大電子版)には次の2つの形が出ている。
  1. be at cross-purposes 目的(意図)を誤解している
  2. talk [be] at cross-purposes with him 彼と話が食い違う
ここは、上の第2の型である。

18 ジローの奮闘 Giraud Acts

Villa Geneviève に行った Poirot と Hastings は、生け垣のところで Marthe Daubreuil の話を聞く。 Renauld 氏が殺された日の朝、Marthe は、Renauld 氏と浮浪者らしき男が言い争っているのを見たと言う。 第二の死体は、その浮浪者だということだった。ただし、服装が違っていたので、すぐにはそうと分からなかったという ことだった。その後、Poirot は屋敷に入り、Jack Renauld の所持品を調べた。目当ての写真を1枚見つけたようだ。 間もなく、Giraud 刑事が Jack を父親殺害容疑で逮捕して連れてきた。

he returned the things pell-mell to the drawer (p.196)
pell-mell とは、「むちゃくちゃに、乱雑に;あわてふためいて」(ジーニアス英和大電子版)という意味の副詞で、 フランス語の pêle-mêle を 輸入した語。ただし、英語で読み易いように綴り字は変わっている。フランス語でも意味は同じで、 辞書(クラウン仏和)には Dans ma chambre, tout est pêle-mêle.(私の部屋は全てぐちゃぐちゃ)という例が 載っている。本小説では、Poirot が Jack の引き出しの中身を空けて調べていたのだが、 Jack が戻ってきたので慌てて中身をぐちゃぐちゃのまま元に戻す様子を表現している。

19 灰色の脳細胞を使って I Use My Grey Cells

Giraud は Jack が父親と共犯者を殺害したという自分の推理を Poirot に説明するが、 Poirot は辻褄の合わない点をいくつか指摘する。 Madame Renauld は、息子が逮捕されたと知って倒れる。Poirot は Hastings に自分で推理をするように促す。 すると、Hastings は Georges Conneau のことを思い出す。

本章の田村訳で「目」という字を使って訳されている表現を集めてみることにする。
  • ジローはためらうような目をポアロに向けた。(p.197) Giraud looked at him doubtfully.
  • ポアロは椅子の背にもたれ、目を閉じて、話を聞く態勢を整え、だがまたちょっと目を開いて付け加えた。(p.198) ..., composing himself to listen. ... And he leaned back and closed his eyes, opening them for a moment to remark: ...
  • あれは目くらましのための戯言(たわごと)だったんです (p.198) All that was a blind.
  • ジローは目をむいた (p.198) Giraud glared
  • だが、ムシュー・ジローの目をあざむくことはできなかった (p.199) But it could not deceive Monsieur Giraud.
  • とっておきの動かぬ証拠をお目にかけましょう (p.199) I will give you one irrefutable proof.
  • ポアロが椅子から腰をあげたとき、その目に緑色の光がきらめくのが見えた。(p.200) I saw a quick flash of green in Poirot's eyes as he rose to his feet.
  • ポアロは目をきらきら輝かせながら訊いた。(p.203) ... inquired Poirot, with twinkling eyes.

20 驚くべき推理 An Amazing Statement

Hastings は、Georges Conneau が第二の死体の浮浪者で、彼が Renauld 氏殺しの犯人だという推理を Poirot に言ってみるが、またしても Poirot に否定されてしまう。Poirot は Hastings に下記のような 事件のまとめを作らせ、Renaud 氏こそ Georges Conneau その人だという推理を述べる。 さらに、Renaud 氏が来ていたコートは息子の Jack のものであり、 事件の晩に Renaud 氏を訪ねてきた女性は、Jack を愛していた Bella Duveen だと推理する。

事件のまとめ (p.208)
  • 5/23 Renauld 氏が息子の Jack と口論。Jack は Paris に向かう。
  • 5/24 Renauld 氏が遺言状を書き換えて、財産のほとんどを妻に遺すことにする。
  • 6/7 朝、Renauld 氏が浮浪者と言い争う。
  • 6/7 午前、浮浪者が死亡。
  • 6/7 Renauld 氏が息子に南米行きを命じる。
  • 6/7 晩、Renauld 氏が Bella Duveen に会う。
なお、6/7 が火曜日 (p.228) なので、事件が起こった年として最もありそうなのは 1921 年である。

21 ポアロの謎解き Hercule Poirot on the Case

Poirot が事件の半分の真相を Hastings に明かす。Georges Conneau (= Renauld 氏) は、Beroldy 事件の後、 南米に渡って富を築いた。20 年経ってフランスに戻ったところ、よりによって近所に Madame Daubreuil (= Madame Beroldy) がいた。Renauld 氏は Madame Daubreuil からゆすられた上、息子の Jack は Marthe Daubreuil と結婚したいと言っている。Renauld 氏は、夫人と相談して、自分が死んだと見せかけて、 夫婦で外国に逃げることにした。そこで、Renauld 氏は遺言状を書き換えた。逃亡計画が完成しないうちに、 たまたま浮浪者が現れ癲癇で死んだ。Renauld 氏はこれを自分の死体代わりに使うことにした。 Renauld 氏は、とりあえず Jack を南米に追い払った。運悪く Bella Duveen が来たが、それも追い払った。 夜、夫人を縛って強盗に入られたと装い、死体を発見されやすい場所に移動する工作をしていた途中に 何者かに殺された。推理を話した後、Poirot と Hastings は Bella Duveen を探しにイギリスに渡ることにする。

It was the face of Cinderella. (p.226)
Hastings は、ふと Poirot が Jack の部屋で見つけた Bella の写真を見た。すると、 「そこにあったのは Cinderella の顔だったのだ。」(田村訳)

22 恋に落ちて I Find Love

Poirot は London で知り合いの興行師に Bella Duveen の写真を見せる。すると、彼女は The Dulcibella Kids という名前で芸をしている姉妹の片方だという。今、Coventry のパレス座にいるというので、Poirot と Hastings はショーを見に行った。Hastings が先にホテルに戻ると、Cinderella がやってきた。Hastings は Cinderella に恋していた。Hastings は Cinderella が Renauld 氏殺しの犯人だと思い込み、Poirot が 帰ってきたとき、Poirot を押さえつけて Cinderella を逃がした。

without more ado (p.230)
Poirot と Hastings は「さっそく」(田村訳)Coventry に赴いた。without much ado の 辞書に出ている意味は「(あとは)苦もなく、すぐさま」(ジーニアス英和大電子版)、 「余計なことはこれくらいにして、これ以上とやかく言うのはやめて、さっそく」(プログレッシブ英和中)。 ado で有名なのはシェイクスピアの『から騒ぎ(Much Ado about Nothing)』である。ado というと 最近の歌手の名前につられて「アド」と読んでしまいそうになるが、正しい読み方は「アドゥー」である。
not as you imagined it, all cock-a-hoop with fine feathers (p.237)
Poirot による Hastings の恋の描写の一部である。田村訳は「それはきみが思っていたように美しい羽をひろげてもいなければ、 晴れやかなものでもなかった。」と工夫されている。cock-a-hoop が「大喜びの、意気揚々とした」(ジーニアス英和大電子版)という意味で、 Poirot がその cock(雄鶏)に引っ掛けて fine feathers と言っているところを何とか不自然にならないように訳してある。 とはいえ、語源的には cock は鳥とはあまり関係がないらしい。cock-a-hoop の本当の語源ははっきりしないらしいが、少なくとも、「栓 (cock) を開けて 液体を出す」という意味ではあったようだ。栓の意味の cock と雄鶏の意味の cock の語源的関係も あまりはっきりしないようだ

23 前途多難 Difficulties Ahead

Hastings は、Cinderella を逃がしたのは良いが、すると Jack Renauld が冤罪に問われることになると気付いて悩む。 解決策を思いつかないので、Poirot についてフランスに戻ることにする。

It would annoy me greatly that anyone should mock themselves at you. (p.242)
ポワロの言葉で「君が笑いものになるのは耐えられない」(田村訳)ということなのだが、 anyone should mock themselves at you は英語として変である。これは フランス語の on se moque de toi の直訳と考えられる。フランス語では、moquer は通常代名動詞 se moquer の形で使われるのだが、英語では themselves は余計で、anyone should mock (at) you が正しい。 つまり、これは Poirot のフランス語訛りの御愛嬌である。

24 「あの人を助けて」 "Save Him!"

Jack はなぜか自分を弁護する気が無いようで、犯人にされかかっている。Renauld 氏の秘書の Gabriel Stoner は Jack を 犯人だとは思っていない。Marthe Daubreuil から Poirot 宛に助けを求める手紙が来ていたので、会いに行ってみると、 Jack を助けてほしいという。

Toqué! (p.248)
Giraud 刑事が Poirot の考えを嘲笑して言うフランス語である。田村訳だと「とうとうオツムがいかれて しまったようですね」と長くなっているが、原文は一語である。日本語ではたしかに一語にするのは困難そうである。

25 意外な結末 An Unexpected Dénouement

翌日、Jack の尋問に立ち会った。Jack の答えは異様で、自ら有罪に向かって進んでいるようなものだった。 でも無罪だと言い張っていた。すると、Bella Duveen が入って来て、自分が Renauld 氏殺しの犯人だと言った。 Bella は Cinderella ではなく、彼女の双子の姉だった。

予審判事
フランスには予審制度があって、予審判事がいる。本小説では Hautet という予審判事が出てくる。 本章の最後の方で、予審判事を表すフランス語 juge d'instruction (p.260) が出てくる。 本小説では、他のところでは the examining magistrate もしくは単に the magistrate と書かれている。 なお、田村訳では Hautet をオートと読ませているが、ふつうにフランス語読みすれば、オーテではなかろうか。

26 わたし宛ての手紙 I Receive a Letter

Cinderella = Dulcie Duveen から Hastings に手紙が届いた。彼女から見た真実が書かれていた。

a flash in the pan (p.265)
「一発屋(の人)、竜頭蛇尾(の人)、線香花火的な人気」(ジーニアス英和大電子版)ということで、 ここでは、本物の恋に対する「一時の気まぐれ」(田村訳)の意味で使われている。元々の意味は、 火打石中の火皿 (pan) の中での発火ということだそうである。ところで、pan は「平鍋」だが、 中国語の pán(盘、盤)は「大皿、盆」を指す。他人の空似ではあろうが、似ているのが面白い。

27 ジャック・ルノーの話 Jack Renauld's Story

Jack は Bella を守ろうとしていたことが分かる。事件の夜、Marthe に会うため Cherbourg から帰ってきていた Jack は、 誰かが刺し殺されているのを見て、その近くに Bella がいるのに気づいたのだった。Poirot は Madame Renauld に話をしに行く。 その後、Jack と Marthe がやってくるが、Madame Renauld は Jack と縁を切ると言い放つ。Jack はショックで倒れる。 夜になって、Dulcie (=Cinderella) がやってきた。Poirot、Hastings、Dulcie は Villa Geneviève に向かう。 Madame Renauld の悲鳴が聞こえる。Dulcie の活躍で、Madame Renauld は死を免れ、Marthe が真犯人であったことが明らかになる。 真犯人には天の裁きが下る。

"Take care," I exclaimed.
"Take care of your grandmother!" retorted the girl. "This is child's play to me." (p.281)
Dulcie (=Cinderella) が木を登ってくるのを見て Hastings が「気を付けろ」と言うのに対して、Dulcie が言い返す言葉が 格好良い。この後、Dulcie は大活躍する。

28 旅の終わり Journey's End

Poirot が Hastings に真相を告げる。Jack と Bella はお互いを犯人だと思い込み、かばい合っていた。 最後は Jack と Bella、Hastings と Dulcie の2組の恋の成就が期待されるところで終わる。

your love for each other has been tested in the fire and not found wanting. (p.296)
Poirot が Jack を励まして Bella のもとにお行きなさいと励ましている時の言葉。これまた格好良い。

Suchet テレビドラマ版のあらすじとメモ

Suchet 版は第44話「ゴルフ場殺人事件 (Murder on the Links)」(脚本 Anthony Horowitz)。 以下、ネタバレしつつ原作との違いをまとめておく。

全体的には、原作にあったユーモラスなドタバタ風味が抑えられているのが大きな違いである。とくに、 Hastings が Poirot を押さえ込む場面とか、Cinderella = Dulcie Duveen が身のこなしの軽さを活かして Madame Renauld を救う場面は無い。

登場人物の大きな変更として、Cinderella = Dulcie Duveen が Suchet 版ではいなくなっている。 そのようにした理由を想像すると、時間を 100 分に収めるために双子というややこしいストーリーを外したということか、 双子に見える俳優を探すのが難しかったか、曲芸じみたことをやらせるのが難しかったか。 Dulcie の役回りは部分的には Isabella (Bella) Duveen が担っている。しかし、 ドラマの Bella は、Dulcie のようなお転婆娘ではないから、完全に代わることはできない。 最後の方で Madame Renauld を救うのが Dulcie でないのはそのためだし(Bella は捕まっているから)、 最後に2組のカップルができないのもそのためである。最後のシーンが Bella と Hastings のキスシーンだから、 Bella は結局 Hastings とカップルになったものと思われるが、Bella がなぜ Jack を選ばなかったのかは謎である。

登場人物の変更としてはその他に以下のようなことがある。

事件が起こった場所も変えてある。原作では Calais から 20 km くらい南西の Merliville という架空の町だが、 Suchet 版では Le Havre の南 10 km くらいの Deauville である。原作通りだと Jack が南米に向けて発つことになっている 港の Cherbourg が遠すぎると考えたのだろう。原作だと、Jack は Merlinville から Cherbourg まで 徒歩とタクシーで行ったことになっているが、300 km 以上あるので遠すぎる。Deauville からなら 100 km くらいだから ありえなくもなさそうである。

筋書きの主な変更には以下のようなことがある。

  1. Suchet 版でありがちなことだが、Poirot と Hastings が生前の被害者 (Paul Renauld) に会っていることになっている。 原作では、依頼状の求めに応じて Geneviève 荘に行ってみたら Paul Renauld はすでに殺されていた。 Suchet 版では、Paul Renauld は、直接口頭で Poirot に助けを求める。そもそも Poirot と Hastings が Deauville に 来たのは休暇のためらしい。Hastings はゴルフを楽しみに、Poirot は美食を楽しみに来ている。
  2. ゴルフをしていた Hastings が Renauld 氏の死体を見つけたことになっている。 原作で死体を見つけるのは、ゴルフ場の作業員。
  3. Suchet 版では、Giraud が Jack Renauld を逮捕する場面を Deauville 杯自転車レースのゴール場面にするという 劇的な演出にしてある。原作では、逮捕の場面の描写は無い。
  4. Poirot による真相説明の場が2箇所あり、原作ではいずれも Hastings に対して説明がなされるのに対し、 Suchet 版ではいつもそうしている通り「皆」の前でなされる。1回目の Renauld 夫妻による逃亡計画が明かされるところでは、 聴衆は Madame Renauld、Stoner と Hastings である。2回目の Renauld 氏殺しの真相が明かされるところでは、 聴衆は Madame Renauld、Stoner、Bella Duveen、Jack、Bex 警察署長と Hastings である。
  5. Marthe は Stoner ともみ合っているうちに銃が発射されて死ぬ。原作では Cinderella = Dulcie Duveen ともみ合っているうちに大理石の暖炉に頭を打ち付けて死ぬ。

Les Petits Meurtres テレビドラマ版のあらすじとメモ

Les Petits Meurtres 版とは、フランスのテレビドラマで、最近 BS 11 で「アガサ・クリスティーの 謎解きゲーム」(元は Escazal Films 制作の Les Petits Meurtres d'Agatha Christie)として放映されているものである。 シーズン2 第7話「ゴルフ場殺人事件 (Le crime ne paie pas)」(脚本 Thierry Debroux、監督 Marc Angelo)を見た。

まず、原作と登場人物の名前が変わっているので対応表を作っておく。 大きな違いとしては、Duveen 姉妹に対応する人物がいない。 原作では、お転婆娘 Dulcie Duveen がいるおかげで物語にドタバタ風味が加えられているのだが、 Les Petits Meurtres 版では Alice Avril がお転婆娘でもともとドタバタ風味なので、それ以上にお転婆娘を 登場させる必要はないと判断されたのだろう。

フランスドラマ版原作の対応する人物役回りなど
ロランス警視 (Swan Laurence)Hercules Poirot
アリス・アブリル (Alice Avril)- Alice は、La Voix du Nord 新聞の記者。Lawrence 警視と喧嘩をしながら事件を追う。Hastings とは違って自分勝手に事件に首を突っ込む。
マルレーヌ (Marlène)- Lawrence 警視の秘書。
ユベール・プティポン (Hubert Petipont)Giraud 内務調査班 (IGS) の小男。Marlène に惚れている。Lawrence 警視を汚職容疑で逮捕する。原作の Giraud は大男。
ドロレス (Dolorès)Éloise Renauld キャバレークラブ「エデン」のマダム。もともと南米の踊り子。
スタニスラス (Stanislas)- キャバレークラブ「エデン」の奇術師。
ポール・ドゥボワーズ (Paul Deboise)Paul Renauld キャバレークラブ「エデン」の経営者。Dolorès の夫。
エロイーズ (Eloïse)Marthe Daubreuille キャバレークラブ「エデン」の歌姫。Miguel の恋人。実は Marthe Salmont の娘だが、Eloïse Monin と名乗っている。
ミゲル・ドゥボワーズ (Miguel Deboise)Jack Renauld Deboise 夫妻の息子。Eloïse と恋仲。
ジルベール・ブールデ (Gilbert Bourdet)- Laurence 警視の友人。
マルト・サルモン (Marthe Salmont)Madame Daubreuil Paul Deboise の元愛人。
トリカール警視 (Tricard)- Laurence 警視の上司。
ロベール・ジュルドイユ (Robert Jourdeuil)- La Voix du Nord 新聞の編集長。Alice Avril の上司。
ジネット・タサン (Ginette Tassin)- キャバレークラブ「エデン」の女性給仕。最初の方で殺される。
デデ (Dédé)浮浪者 Paul Deboise が自分の身代わり遺体とすべく殺した男。原作では癲癇の発作で死ぬ。

以下、ネタバレしつつあらすじをまとめておく。原作とは大枠だけ同じでかなり異なる展開になっている。 そもそもゴルフ場では殺人が起きていない。ドラマの題名も Le crime ne paie pas と変えられているが、 日本語版は原作のまま「ゴルフ場殺人事件」になっている。原作では最初の方で Paul Renauld が死ぬのに対して、 Les Petits Meurtres 版ではちょうど真ん中あたりで Paul Deboise (原作の Paul Renauld に相当)が死ぬ。 つまり、その前にけっこういろいろなことが起こる。それで、最初のうちは原作とドラマ版がどう対応しているのか さっぱりわからないまま話が進んでゆく。原作の Madame Daubreuil に相当する Marthe Salmont は、 かなり終わりの方になって初めて登場する。原作に比べると、Paul Deboise はかなりの悪人になっている (3人の人物を殺した)のに対し、Eloïse (原作のMarthe Daubreuil に相当)の悪人度が下がって、 情状酌量の余地があることになっている。Eloïse は逮捕されるが、死ぬことはない。